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南インド・レポート 2011年3月19日〜3月28日

川田康平

格差社会と幸せへの努力、そして笑顔

 

 

飛行機を乗り継ぎ8時間かけてインドに到着したのは深夜、空港には数え切れない程の人や車、舗装されていない地面から舞い上がる砂埃、ところ構わず行き交う車やバイクから止めどなく鳴り響くクラクション。深夜にもかかわらず「活気」と言うには少し違うかも知れない独特な雰囲気を感じた。

こうして初めて見るインドの風景からは、今まで自分が持っていたインドに対する漠然としたイメージよりもはるかに強いインパクトがあった。TVやネットで得られる情報などは、現実を目の前にすれば一瞬で消えてしまうぐらいだった。

今回、AHI(アジア保健研修所)を介して、インドのNGO団体ANITRA(アジア研修・調査活動ネットワーク)とARP(農村貧困者協会)の協力のもと、南インドが直面している様々な問題や現状についてホームステイを通して体験させていただく機会を得た。

 

  

 

■カースト制度による格差社会

「日本では考えられない制度」、私がカースト制度を一言で表すならこう言うだろう。現在でもインドの人々は「司祭、王侯、商人、隷属民」に分けられており、インドにもアウトカースト(不可触民)と差別を受けている人々がいる。

この身分の人たちは、職務に対して正当な賃金を貰えず、同じヒンドゥー教徒なのにもかかわらず寺院にも入れない。また居住区は隔離され、衣服、言語などの生活様式も強制されている。

インドにあるヒンドゥー憲法では、カースト制度は廃止されているのだが、私が訪れた南インドや農村地域ではまだ差別が色濃く残り、人口10億人以上の中の3億人がアウトカーストとされている。

初日に訪問したチェンナイ市内のスラムに住む人々は、糞尿やゴミが入り混じっている場所に住み、とても服とは呼べないような衣服を身にまとい、腰を屈めて出入りするような小さい家に何人もの家族が身を寄せ合いながら暮らしていた。

一軒目にホームステイをさせていただいたディーナバンドゥー村の農民の家庭では、コンクリートだけで作られた6畳ほどの住居に家族5人が住み、少ない日雇い賃金のため家族で1日200円の生活をしていた。

二軒目の農漁村民が多く住む村のキリスト教牧師の家庭では、カースト制度による生活苦を理由に改宗し、インド政府が制定しているアウトカーストの優遇制度の権利を放棄する替わりに人間としての尊厳を求めた。

 

  

 

■人としての強さ、幸せへの努力

世界にはこのような劣悪な環境の中で暮らしている人々がいるということを知り、計り知れないショックを受けた。いま私が暮らしている日本という国が、世界でもトップクラスの住み易さと良い治安を誇っているありがたい環境にいるということを改めて自覚した。

自分がいままで何気なく聞いたり目にしたりしていた「人類みな兄弟」という言葉が、この厳しい現実を知ってからは、とても安っぽい言葉に感じてしまった。インドだけではなく世界中にこの人々のようにキツイ環境の中で暮らしている人たちがいて、それは「どうにもならないこと」として受け入れることしか出来ない事実と知ったとき本当に心が痛んだ。

しかし、そこにいる人々は私たちを笑顔で迎え入れてくれたのだった。

 

東日本大震災と、人としてのアクション~まとめ

農村ホームステイの際、そこに住む多くの子供たちは初めて見る日本人の自分に対し、たくさんの質問をして、日本と言う国の文化や風土に想像を膨らませ、ワクワクした笑顔を見せてくれた。それは大人も同じで、お互いに慣れない英語を使い、色々な情報を交換した。

 

 

多くの村人が訪問の一週間前に起きた東日本大震災の心配をしてくれ、訪れた寺院の僧侶は日本人の僕のために、日本の一日も早い復興のためにとお祈りをしてくれた。

村で出会った老人は、パンをお供え物の代わりとして差し出してきて、「遠い日本から来てくれたアナタと友達になりたい。」と言い、私がそれを快く了承すると、涙まじりの笑顔で力いっぱい私の手を両手で握り喜んでくれた。このように、村では多くの人たちが、まるで珍しい動物を見るように私の元を訪れ、笑顔で挨拶をしてくれた。

 

 

ホームステイ先の家庭には私とひとつ違いのアダムスという青年がいたが、彼は父親のように将来は牧師になり、村内の生活に困っているアウトカーストの人々に、正当な給料での仕事を紹介できるようなソーシャルワーカーになりたいと夢を語った。

いかなる環境の中にいようとも、必死に生き、様々な苦悩と戦いながらも笑顔を絶やさない。弱いからこそ助け合う、どの村内、どの集落でも人と人との距離が近く、すべての境遇や困難を共有して生きている人たちだからこそ強いのだと、私には心からそう思えた。

 

 

■ホームステイを終えて

私が過ごしたインドでの10日間は、言葉では言い表せないほどとても色濃く私の中の記憶に残った。自分が暮らしている日本の裕福さの影にはこのように苦しむ人々がいて、自分はそれを知らずに暮らしてきた。そしてまだ多くの人々はそのような現状を知らずに暮らしている。今回学んだ現実を、このレポートを介してより多くの人たちに知ってもらいたい。

 

  

 

今現在、日本ではさまざまな基金やボランティア活動があり、アクションを起こそうと思えばいくらでも出来ると思う。まずは知ることから、同じ人間としてこのような環境下に置かれている人たちの生活を、受け入れて欲しいと心から願う。

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