きずなASSIST
KIZUNA Assist
バングラデシュ・レポート 2004年8月25日〜9月4日
想像以上にしっかり。組織化された現地NGO団体の活動にびっくりしました。
ジャゴラニ・チャクラは、現地NGO団体。この団体の理事を務めるA.K.アルズー氏が、昨年AHIに研修生として来たことを受け、今回のツアーではジャゴラニ・チャクラ(以下JCと称す)の援助活動を視察する事となりました。
JCの活動地域はバングラデシュ全体の33.3%にもわたっており、村では4.1%(2,800村)、世帯では0.7%(183,000軒)にあたり、バングラデシュ南西部やジョソール州といった地方をフォローしています。
JCのスタッフは約1,000名いるそうで、日本の整備された企業と同様に、彼等が組織化された中で配置され役割が明確にされていることにはびっくり。訪問する前の印象では、まだまだ行き当たりばったりの人海戦術で活動していると思っていたため、正直驚きました。
JCのさまざまな援助活動は、一人ひとりの社会的自立と精神力の向上が目的。
活動はさまざまな援助プログラムを展開し、経済的に遅れている人や体の不自由な人などを教育して、社会的に自立できるようにするとともに、個々の人間の精神力を向上させることを目的としています。その中でも、バングラデシュ人の民族性も考慮して、少しずつ確実に、人間が自然に行える範囲でバランス良く進めようとしている点は、「人権」にも配慮していると感じました。しかし、現実的には身分制度や宗教的な問題があり、援助活動の妨げになることも事実のようです。
法律上は18歳未満の女性は出産禁止。 なのに、どう見ても幼さが残る母親も……。
サテライトクリニックとは、各学校で月に一度だけ病院が開かれることで、目的は、母子の病気治療、予防接種、家族計画の指導などがあり、教室には溢れんばかり母子が来ていました。予防接種は無料で、全て政府が負担してくれます。以前は、予防接種をした記録が無かったそうですが、今は母子それぞれにカードを発行し記録を残すように改善されていました。 バングラデシュは教育と人口問題が一番の課題。そのため、家族計画の指導にも力を入れており、子供は2~3人と指導していますが、文化的な問題もあるのでなかなか難しい様子でした。事実、法律上は18歳未満の女性は子供がつくれないとされているのですが、実際はどう見ても幼さが残る母親もおり、幼児婚も解消されてはいないようでした。
母親たちの半数は、文字の読み書きができないという悲しい現実。
ここに来ている母親たちの識字率は、自分の名前が書ける人が91%、簡単な読み書きが出来る人が50~60%(通訳の見解はもう10%位低い)で、今まで、いかに女性が軽視され、教育がないがしろされてきたかと思うと、非常に悲しい思いでした。
収益がでるのは10年後。 林業で村の開発資金を調達するユニオン。
ユニオンとは、いくつもの村を統括する組織のことです。
ユニオンでは、村の開発のための政府援助は期待できないということで、自分たちで事業を起こしています。その事業は実に長期的なもので、現在植えている1,000本の木を、10年後に1本5,000タカ(日本円で10,000円)で売るというもの。
収益はユニオンと住民で折半する仕組みになっています。
宝くじで税金を徴収?! 年一回の抽選会は、住民みんなが大興奮。
ユニオンでは、税金を払えない、払わない住民が非常に多い。そのため、納税義務を周知させる目的で、税金を払えば宝くじが買えるというユニークな制度をつくっています。
宝くじ収入の16%を景品(テレビ、自転車など)に、残りの84%を税金に当てる仕組み。そして年1回、宝くじの抽選会が行われます。
私たちの訪問に合わせてか、ちょうどその抽選会が行われることになり、私たちがステージ上に上がって抽選箱から引くことに。参加した数百人の住民は、警備を押し退けてどんどんステージに迫ってくるほどの興奮状態。少し恐怖を感じた抽選会でしたが、住民たちにとってはそれだけ生活のかかった重要なイベントなのだということ改めて感じました。
市場で人気の強い魚。
その秘密は、養殖方法にありました。
訪問した養殖場は、企業として、7種類の魚をそれぞれ稚魚から養殖し、販売しています。この養殖場で育てられた魚は、市場でも人気があるそうです。その理由は、川で育った自然の雄を買ってきて受精するため、たいへん強い魚ができるからだとか。
その実績が評価され、養殖場では大学などから研修生を受け入れており、養殖業界全体の育成を進めています。また、自身の会社も過去に日本から技術者を2名呼び、技術向上を図っているそうです。無借金経営で社員を12名雇用し、技術力を含め政府から表彰された経験があることを、社長がとても誇りに思っている様子が印象的でした。
期待して食べた魚の味は……。
日本人にはやっぱり醤油味の煮魚?!
ご自宅も訪問させていただきましたが、日本の中流家庭以上の暮らしぶりにバングラデシュの貧富の差を実感しました。
帰りにお土産で大きな魚をいただき、前評判でバングラデシュの魚は美味しいと聞いていたので期待していました。しかしながら、残念なことに香辛料が強すぎて魚本来の味が消えてしまい、ただ辛いだけの魚でした。
やっぱり、日本人は薄口の醤油で煮るのが一番だと思います。
勉強を教えるだけじゃない。
学校は子供たちの食生活を管理する共同宿舎のような存在。
母親が売春をして生計を立てている子供たちに対し、人権保護プログラムでは教育を受けさせるとともに、子供たちに必要な栄養分を摂取させることを徹底しています。この学校に通う160人(2~14歳)のうち、100人はさまざまなスラム街に住んでおり、昼食は学校が提供。残り60人は学校を寮代わりにして住んでおり、食生活は総合的に管理されています。
生活は貧しくても、心は豊か。
遊びを通してふれた子供たちのやさしい気づかいに感動。
訪問した時間帯は休憩時間だったので、子供たちと一緒にキャランボードやサッカーをして遊ぶことにより、彼らのとても素晴らしい心に触れることができました。キャランボードというゲームは、ビリヤードのおはじき版みたいなもので、直径10cmくらいのプレートを指ではじいて、一回り小さい黒(5点)、白(10点)、オレンジ(25点)のプレートを四隅の穴に落として合計点を競うゲームです。子供たちは毎日遊んでいるのでとても上手ですが、私はなかなか上手くいきません。そうこうしていると、ある子供が私の順番になると、そっとプレートを落しやすい場所に動かしてくれました。大変な貧困の中での生活を余儀なくされ、経済的には貧しいにもかかわらず、子供なりに気づかいのできる豊かな心には感動さえ覚えました。
「ノクシカタ」を世界マーケットへ。 価値ある商品化に取り組むチャルカを訪問。
「ノクシカタ」というバングラデシュの伝統工芸品の制作を、事業化しているチャルカの事務所を訪問しました。「ノクシカタ」とは、バングラデシュ版の刺し子のことで、古くなったサリー等を重ね、刺し子や刺繍をして布団や赤ちゃんのおくるみなどにしたものです。現在はお土産用にクションカバー、ティッシュカバー、財布などを作り販売しています。チャルカはその「ノクシカタ」の事業を統括している事務所兼工場。デザイン、色構成、仕上げなどを行っており、一針ひとはりの制作は、各村の家庭(作り手は700名以上)で行っています。
この事業を海外マーケットへと拡大させるため、チャルカではアメリカやイタリアからデザイナーを招くなど、バングラデシュの伝統を守りながらも、それぞれの国の好みに合った図柄を商品化しています。もちろん、海外からのオーダーに応えていくためには、新しい技術を身につけなければなりません。そのため、チャルカでは自らの技術を向上させ、新しいデザインにトライした者にはボーナスを支給するなど成果主義を導入。その点はバングラデシュの農村といえども、日本の企業と同じだと思いました。
見た目はきれいなのに使えない?! 悲しい問題を抱えたノクシカタ商品。
一つ残念なことは、ここで買ったお土産のティッシュケースです。刺繍はとてもきれいなのですが、帰国後、使おうとティッシュの箱に掛けてみたところ、肝心のティッシュペーパーを取り出す口が縫われていて用を成さないものだったのです。作り手の女性たちは、きっと、それが何の目的で使われるか知らされないまま縫ったのでしょう。チャルカのスタッフが、農村の女性たちに一つひとつの商品の使用目的を教えていけば、ノクシカタ商品の品質も向上するだろうし、作業をしている女性たちも自ら新たなアイデアが生まれてくるのではないかと感じました。
ノクシカタ制作の収入は1日20円。 稼いだお金で化粧品を買ったり、牛を買ったり。
チャルカから仕事を請け負ってノクシカタを制作する女性たちは、家事をしながら村の中で互いに教え合って制作技術を向上させています。ここの村ではイタリアからのオーダーでアップリケも制作していました。ノクシカタでは1日10タカ(日本円で20円)の収入にしかなりませんが、アップリケは2倍の収入になるため、もっと上手になろうという気持ちが強く働くようでした。収入の使い道はさまざまで、生活費、貯金、自分のアクセサリーや化粧品代のほか、子供の服や教材、中には牛を買った女性もいました。
旦那さんの愚痴をこぼしてストレスを発散。 日本と変わらない光景がありました。
仲間で制作している時、女性たちは旦那さんの悪口を言いながら作業しているそうです。それを聞いて、その点は日本と変わらないなぁと、ある意味安心しました。彼女たちは労働で対価を得るようになってとても自信がついたようで、いろいろなことを尋ねても非常に明るく答えてくれるのが印象的でした。これが、JCの目指している社会的な自立と、個々の人間の精神力を向上させることなのだと感じました。
農村からJC幹部のお宅へ、滞在先が変更に。 モフィスさん宅で過ごした快適な2日間。
今回のツアーは農村ではなくJCの幹部クラスのお宅にホームステイとなりました。少し拍子抜けした面もありますが、農村のことを思えばとても快適な2日間を過ごさせてもらいました。農村でなかった理由は、推測ですが、出発の4日前にダッカ市で爆破事件があり、死者、負傷者が出たことにより、現地の治安を心配しての配慮だと思われます。
私がステイさせていただいたお宅は、モフィスさん宅で、JCでは経理・財務担当の責任者。家族は奥さんのシャルミン、実兄のムントゥと奥さんのリピー、姪のティテリーの5人家族(ステイ中は別の兄弟や甥姪がたくさん遊びに来ていました)です。奥さんのシャルミンは、ダッカで中学校の先生をしているため別居していますが、この日はホームステイをする私のために、わざわざバスで6時間かけてダッカから帰ってきてくれたそうで、うれしい限りでした。残念ながらシャルミンの身体的な理由で、モフィス夫妻には子どもができないとのことでした。
バングラデシュでは、男性が先に食事をとるのが習慣。
女性に見られながらの食事は、さすがに緊張。
バングラデシュでは男性が食事を済ませた後に女性が食事をする習慣があります。ステイ中もモフィスさんと私が2人で食事をしているところを周りで皆が見ているという環境でした。そんな雰囲気で、香辛料ベースの食事を手で食べます(私はスプーンで食べましたが)ので、さすがに食が進みません。そんな私の様子を見かねて、何が食べたいか聞いてくれたり、普段自分たちは食べないようなジャムを買ってきて用意してくださったりと気をつかっていただき、大変感謝しています。
モフィスさんは教育を受けているので、英語はほとんど話せるようでした。私がもう少し英語ができれば彼らに無駄な心配をかけずに済んだのにと思うと反省するばかりです。
診療所は、女性や子供たちの身の拠り所。 村でお金を出し合って医者を雇っています。
この村では、JCから独立した組織として、自分たちでお金を出し合って医者を雇っています。先生はJCで6ヶ月間研修を受けた研修生で、医師ではないため、高度なことについては専門医を紹介してもらいます。男性は仕事で外へ出ることがあるので、村の外の病院にかかることができますが、女性や子供たちはそうもいかず、診療所の果たす役割が大きくなります。ここの先生は女性ということもあって、村の女性たちは安心していろいろな相談ができる利点もあるようでした。
診療所では、栄養バランスや衛生の指導など、病気予防も担当しています。
診療所といっても、トタン屋根の窓も無い10畳位のスペースの所に、先生の机と聴診器、血圧計程度の簡単な医療器具に薬の入った棚が一つあるくらいです。日本と比べると、これで大丈夫なのか?と思いますが、彼女たちにとってみれば、食事の栄養バランス、衛生指導など体を守る知識も教えてもらえるので、とても貴重な存在だと思います。そのおかげでしょうか、この村の女性たちは、極端に太った人、痩せた人もいなくて、皆さん顔色が良く健康そうに見えたので、この診療所が上手く機能しているのではないかと感じました。
また、貧しい農村などでは“家族計画”という意識も乏しく、どうしても子沢山となってしまいます。それが診療所などの指導もあってか、家族計画のために不妊(3ヶ月間)の注射(日本では副作用が強いので認可されていません)を受ける女性も増え、意識も少しずつ変わってきているようです。
まだまだ子供たちが家計を支えている現状。 学校での勉強は、1日3時間という短さ。
JCの運営する、働きながら学校へ通う子供たちの教育プログラムを視察しました。ここには、貧困や親の教育に対する認識の低さから、十分な教育が受けられない子供たちが通っています。学校以外の時間は店番、工場の作業、自営の手伝い、兄弟の面倒、刺繍などをして働き、自分自身や家庭の生計を支えています。教育といっても1日3時間で、小学校5年間の内容を3年間で習得するというものでしたので、実際どの程度の学力がついているかは疑問を感じます。
それでも子供たちは、学校が楽しくて行きたくて仕方ない様子で、授業を受けている目も輝いており、声もよく出ていたし、何より将来の夢(医者、エンジニアなど)をちゃんと持っていることに少し安心しました。
「あなたたちは小学生の頃、働いていましたか?」と質問されて……。
反対に、ショックなことが二つありました。一つは、ある子供に「あなたたちは、僕たちの年齢の頃に働いていましたか?」と質問されたことです。日本では我々の世代以前からずっと義務教育が受けられることはごく当たり前のことで、当時は何の有難さも感じていなかったので、とても恥ずかしく思いました。
もう一つは、まだ小学校に入ったばかりの子供たちの授業で、「勉強とは“人間をつくる”ことであり、生まれただけでは“人”ではなく“動物”と同じである」と教えていることです。良し悪しは別として、日本では特別意識することもなく受けている“義務教育”。それに対して、なぜ、勉強しなければならないのか?から“教育”をはじめなければならない現状に、バングラデシュ全体の教育に対する認識の低さを垣間見たように感じました。
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