076: 社運はお客様の手中に

2012.12.10

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 古今東西より、商いの鉄則はお客さま第一である。ここにはひとつの例外もいかなる建て前も入る余地はない。
 我々の給料はすべてお客さまからいただいている。一時でもってお客さまを上下のランクで決めつけてはいけない。それは現在のことより将来のことを重んじるからだ。時を経ていくなかで、上のお客様は上に、下のお客さまは下とは限らない。むしろ上は下に、下は上に変化していくことも世の習いだ。
 ありとあらゆる経営の最大のテーマはお客様に、いかに永きにわたって気に入られ、可愛がられ、信用を勝ちとっていくかである。従って私の命懸けといってもいい日常最大の関心事は各部門の皆さんが、私の代理人として、また経営理念の実践人としてその使命と役割をしっかり果たしているかどうかにつきる。
 社の命運は常に皆さんと共にあり、すべてお客さまの手中に帰する。お客さまを大切にしてこそ、私どもも大切にしてもらえる。お客さまをないがしろにしたら、私どももないがしろにされる。お客さまと一体化してはじめて、お客さまと喜びや感動を共有できる。このレベルに達したときに、ほんとうにお客さまの満足を得ることができ、同時にほんとうのやりがいが生まれる。
 「お客さまのお役に立ちたい」が中味のともなわないお題目になり、安易に言葉だけが独り歩きするような姿勢ではお客さまには通用しない。訥弁でもいい、言動に誠意がこめられていてこそお客さまの心を打つ。
 さてお客さまの満足にはそのサービスの品質において三つのレベルがある。
 (1)言われてからする。
 (2)言われる前にする。
 (3)何かプラスアルファをしたり、お客さまの思いも及ばないことをする。
(3)のレベルのサービスはお客さまをとりこにするのみならず、四方八方へとよき口コミの伝達者として強い味方になってくれる。
 常に考えよ、自分がお客さまだったらどうであろうか。どんな要望や満足を求めるのか、を。買い手の立場になれば、その答えは自ずと出る。
 また自分が買い手のときに、意識して厳しい買い手になってみよう。その時の売り手の対応がずいぶんと勉強になる。サービスの精神や品質を学ぶには反面教師を含めてその題材はあちこちに転がっている。
 お客さま第一はお客さま満足の追求から、お客さま満足の追求はサービスの品質の高低から、サービスの品質の高低は心配りの深浅によって決まる。一朝一夕にはできないが、大事と心得、日々専心努力すれば身につく。

平成十四年七月三十一日