025: 冬眠打破

2010.10.25

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 今冬はエルニーニョ現象とやらで暖かい日が続くと思うと、時折東京などでは記録的な大雪に見舞われたりで天気も気まぐれだ。
 春はもう間近だが、花というのは暖かければ早く咲くのだろうと思ったら必ずしもそうではないらしい。この時期、開花の春を待つ草木にとっては、むしろ強い寒気が必要だそうだ。冬眠状態にある植物がこの強烈な一撃で目が覚め時を知る。この現象を「冬眠打破」と言うそうだ。自然界には厳とした理と精妙な仕組みがあるようだ。自然界の一部の人間もこれと同じように思えてならない。
 過日、昨年度の社長特別賞、営業統括本部長特別賞、営業部長賞を受賞された優秀な社員の皆さんと一席を共にした。いずれも甲乙つけがたい好青年の面々だ。実に卒直にして実直だ。真直ぐに向う姿勢だからいい結果が出せるのは、至極当然のことと思う。
 短い時間であったが、感ずるままに言うと彼らには、おおよそ次のようなことが共通していると思う。
●先ず礼儀正しい、さりげない気配りをもっている。
●顔がいい、生き生きとしている。
●独り善がりではなく、他人善がりである。常に周りの人のことを考えている。だからこそ自分のこともよく考えている。言い換えれば自分を大切にしているからこそ、周りの人のこともよく思んばかる。
●個のこと以上にチームワークを重んじる。
●さわやかで、いさぎよい。自分のでき得ることを精一杯やるから、勝っても負けても悔いなし。
●他人の話にはよく耳をかたむける。
●いろいろと悩んでいる。(それは正に努力している証であるが)むしろ、次から次へといろいろのテーマを持っていると言った方が正しいかもしれない。
●自己反省と自己責任、チャレンジ精神と向上心が人一倍強い。
●この若さにして驚くほどの自然体だ。
 それぞれ、口数こそ少ないが、黙っていても一人ひとりの思いの波動がどんどん伝わってくる。間違いなくこう言う人たちが、社の次代の柱石を担っていくことであろう。これからもおごらず、あなどらず、ひるまずいろいろの経験や試練を重ねながら、さらに自己研鑽に励んで、大きく大きく育っていってもらいたいと心底より願うものである。何よりも嬉しくて嬉しくて仕方がない、楽しみな今日この頃である。

平成十年一月三十日