思うままに No.289
2020.01.01
※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~
明けましてお目出度うございます。今一度「健康づくり、幸福づくり、人づくり」を念頭においてワンチームでもって良き年にしましょう。
あらゆる生物の中で唯一人間だけだ。衣服をまとい肩書きや装飾品を身につけるのは。他の生き物は生れたままの姿で一生を過ごす。余計なものは一切装わず裸一貫、知恵と能力と体力を使って勝負し生き抜いていく。
装いは隠したり化けたりすることができる故に、ごまかしや、まやかしになり易い。真実の姿が見えにくくなる。人間も生れるときと、風呂に入るときは素裸になる。浴場ではどこの誰であろうが名札はなし、身分も地位も知る由はなし。ついているものは皆同じ。気分はゆったり何の気がねもいらない。
言いたいことは肩書きや装飾に惑わされず正味で人生を勝負していくには、結局のところ人間力の高低が鍵をにぎるということだ。人間力とは何か。正真正銘まる裸の人間の魅力だ。全身から放たれるオーラのような何かが人を惹きつける。ただそこに居るだけで周りが和む。慈愛に溢れ人を安堵で包み込む。
人間力はおいそれと容易につくものではない。メッキはすぐ剥がれる。温室育ちではとても無理なこと。風雪に耐えてこそ育まれる。様々な辛酸をなめ、悔しさをバネにし、刻苦をエネルギーに換え、健気に前へ前へと進む。そこから優しさや逞しさ、心配りや情愛が深まる。
力は力でも人間力は諸々の能力とは同列ではない。次元が違う。言うなれば能力は枝葉で、人間力は地中でしっかり支える根だ。この人間力は古今東西どこにあろうとも人を魅了し尊敬の的になる。
さてマラソンの金メダリスト高橋尚子選手を育て上げた名監督故小出氏が選手たちを前にしてよく口を酸っぱく説いた言葉がある。「マラソンは何の為にやるのか、厳しい練習は何の為に積むのか、辛いときはいつも初心にかえることの大切さや原点の重要さ」を折に触れて口にした。また「何をするにも物事には目的と目標があるのだ」と。
「目的はひとつだ。マラソンという競技を通していかに人間力を高めていくかにある。メダリストになるのは目標であって目的ではない。諸々の目標達成はあくまでも目的を実現するための方法手段だ。勘違いをするな」と。
我々も人づくりにおいては土俵は違うが目指すものは同じだ。日々目標達成に向けて挑み続ける中で目的とする人間力を高めていくことにある。その意味では正しく職場は皆が互いに切磋琢磨して自分を高めていく人間錬磨の道場だ。