思うままに No.290

2020.01.31

エッセー「思うままに」

   

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 

 過日は某百貨店にてどうにも解せない思いをした。

 

 並ぶ二基のエレベーター、一つは障害者優先、もう一つは車椅子とベビーカー優先の表示がある。係員がせわしくエレベーターの前で来るお客様をつかまえてはエレベーターに記してある表示の説明をする。分りましたと頷くと赤いビニールテープで囲んだコーナーに並んで待つようにと案内される。

 

 当方もさして急ぎでもなかったのでしばし順番を待つことにした。ようやく順番がきて車椅子とベビーカー優先のエレベーターに乗り込む。B1から10Fへと。

 

 杖をついた人をはじめ4・5人の高齢者(どうみても私より年上)を含めほぼ満員に近い状態。動き出す。2Fで止まりベビーカーを押す一組の若夫婦が乗ろうとするが満員とみたか諦めてパスしようとしたその時、エレベーターの係員が涼しい顔をして、ベビーカーが乗れるよう他のお客様はここでいったん降りて欲しいと言わんばかりの、半ば強制的にもとれるような口調だ。一瞬ムッとしたが、とっさに私が降りれば彼らが乗れそうだと思って降りることにした。

 

 そこで降りたはいいが、何とも割り切れない不快な思いが湧いてくる。この調子だと止まる各階で他の高齢者たちも順次降ろされるハメになるであろうと。どうも合点がいかない。車椅子とベビーカー以外の人は途中で降りてもらいますよとどこにも表示もなければ事前の説明もなし。

 

 弱者優先は言わずとも当然のことだが、車椅子やベビーカーよりも、むしろ杖をつく不自由な人のほうが辛いのではないか。見た目では分らない高齢者を降ろして、優先者に譲るようにと強要的なもの言いはいかがなものか。次が来るまで少し待ってもらえれば済むことではないか。

 

 行き過ぎた運用、無神経、差別的な接客にはあきれる。この店は商品、サービスを売る前に反感と不評をお客様から買うことになる。マナーの悪いお客様はどこにでもいる。ヘタなルールは却って無用の混乱をつくる。それよりも圧倒的多数を占める普通のお客様を尊重し、モラルと自主性に任せたほうがうんとうまくいく。

 

 それから、綺麗なエレベーターガールさん、マニュアル一辺倒、無配慮な接客はせっかくの美貌が泣きますよと。そもそもこの係は必要なのか。この高いコストを他にまわしたらどうか。

 

 いっそのこと一基は従来通り障害者優先の一般用でいいが、問題のもう一基は車椅子とベビーカー専用にすれば余計な混乱も非礼もなくなる。サービスの本質は心配りだ。侮りや偏りのないようにしないとせっかくの他のいいサービスまでも台無しになる。