思うままに No.214

2013.09.30

エッセー「思うままに」

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 うんざりするほどの暑い暑い夏がようやく終わった。CO2のせいかどうか地球の温暖化が年を追うごとに暑くする。今夏は特に年輩者には体調管理に大変だったように思う。私たちは企業活動を通して健康づくりに少しでもお役に立つことを標榜している以上、その前に先ず自分自身の健康管理が出来ていなければならないと改めて思うところだ。

 さて日常のこと人であれ物であれ、あって当たり前のものがいったん失くなったりするときはじめてその価値の有り難さが分かる。また物事が継続して、当たり前のことが当たり前のようにして出来るのはほんとうのところ当たり前のことではない。当たり前を当たり前のように出来るということは実は当たり前ではない。不断の工夫と努力がそれを下支えしているからだ。この下支えがあって初めて当たり前を可能にする。

 勝って当たり前と言われるなかレスリング55キロ級でオリンピック3連覇世界大会を合わせて14連勝の前人未到の偉業を成し得た吉田沙保里さんも当たり前ではない。並々ならない意志による日々の猛練習に耐え続けてきたからこそだ。

 彼女にはこれでいいかという満足するそぶりが見えない。常に自分に打ち勝つ克己心とさらに伸びていこうとする向上心の塊のような顔をのぞかせる。次へのオリンピックは無論のことどこまで記録を塗りかえていくのか、その可能性に挑む上で、当たり前でない日々の精進を重ねていくことに大きな期待と確信をするところだ。

 この間2020年のオリンピックの開催地が東京に決定した。ブエノスアイレスの最終選考会でプレゼンターとしてトップバッターに立ったパラリンピアンの佐藤真海さんの説得力に富んだスピーチには感銘するあまりに身震いを覚えた。

 先の東日本大震災に見舞われた宮城県気仙沼の出身であり、また不幸にも骨肉腫により無念にも片足を切断する。失意のなか一念発起して「あきらめるな、夢をもとう」をモットーに走り幅跳びで3大会連続出場を果たし大活躍をする。人々を魅了するさわやかにして明るい表情に加えて「スポーツの力に生きる希望の力をもらった」と切々なる深い思いが多くのIOCの役員の胸を打った。

 さらに特筆すべきことは「失くしたものより今あるものを大事にしたい」という経験に裏打ちされたコメントは私たちに大きな勇気と希望、叱咤と激励を下さったように思う。