095: 基本から入って基本に戻る

2013.09.25

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 家屋の基本は言うまでもなく土台だ。土台をおろそかにしたら、いくら屋上に屋を重ねても砂上の楼閣に過ぎない。習い事、芸事、スポーツなど総てはまず基本を修めることから始まる。基本なくして応用はない。基本が出来てこそ技量が磨かれ腕前が上がっていくものだ。
 日本のプロ野球の選手が憧れの大リーグに行って一番体得してくることは、大リーガーは徹頭徹尾基本に忠実であるという点だ。基本を修得するには、その重要性を十分に理解した上で、繰り返し繰り返し全身にしみこませていくことだ。どのプレーヤーも練習は基本づくりから始めるが、特に一流プレーヤーと呼ばれる人々は例外なく最も基本にこだわり、大事にする。
 さて配置の基本は何か。先用後利により先ず初めになすべきことは心を配ることだ。その後だ、薬を配るのは。売るのではなく、情報の提供や助言を通してタイムリーにお手伝いをしていくことだ。そして、その結果売れて行くのだ。自分がお客様だったら、どうしてもらいたいのかを常に考え尽くしていなければならない。一〇〇%そのことを思ってお客様に接することが肝要だ。
 お客様は判断するとき、こちらの物差しでは計りきれない様々な価値観による物差しをもっている。また色々の目で営業マンの動向を見極めている。提示される商品を云々する前に、まっ先に営業マンの姿勢や気配りを注意深く見つめているのだ。それはそれはこちらの想像する以上にだ。この人は私にとって有益な人なのか、本当に私のことを思って言ってくれているのか、ただ物を売りつけようとしているだけなのか、信用がおけるか、と言うように。だから接客にはお客様の心理心情をしっかりと全神経を集中してつかんでおかなければならない。
 更に言うならば、お客様と営業マン、買い手と売り手というような対立の構図ではなく、心が通い合う「人と人との関係」「喜び分かち合う関係」として位置づけ、双方の利益を共有していくことを考えるべきだ。そして次の段階で薬を配ることになるが、その基本は何か。
 今日の仕事が明日につながるよう、種まきをしているか。次回の訪問がお客様と共々楽しみになるようにしているか。お客様の特性、要望、隠れた欲求、家族構成、季節などを考えて、種類・数量を配置しているか、だ。そのためには、目標計画について、具体的な数値を明示しなければならない。
 更に商品の出庫、手持在庫はどうか。トランクの中は整然となっているか。品切れ、使用期限切れ、過不足はないか。商品の勉強をしているか。車内外は清潔に整理整頓されているか。迷惑駐車していないか。身だしなみはさっぱりしているか。動作はテキパキとしているか。気持ちの良いあいさつはできているか、等々
 肝に銘じよ、常に基本から入って基本に戻るのだ。すべて基本のなかに答がある。

平成十六年二月二十八日