思うままに No.168

2009.12.01

エッセー「思うままに」

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 上も下もあちこちで言い訳がまかり通っている。許せない。
 言い訳は組織と信頼関係を蝕む厄介な病原菌だ。自分の失敗や過失、相手からの指摘や批判に対して、もっともらくし弁明して自分の正当性を主張して言い逃れを図る。謙虚さ潔さを欠く行為がゆえに、見苦しく聞き捨てならない。周囲に迷惑をかけ、恥のうわぬりを重ねていく。
 この病気が組織に蔓延すると無責任集団と化する。人間関係のもっとも基本となる信頼、信用を著しく損う。言い訳というのは責任放棄にあたるのだ。当人が承知して言う段階ではまだ矯正していく余地があるが、なんのためらいもなく言い訳が日常の習性となって、無意識に口をつくようになると重症患者だ。
 滑けいにもその場その場を舌先三寸でうまく立ち回り切り抜けているつもりなのであろうが、周囲はちゃんとお見通しだ。かくしてこういう輩は当然の帰結として「言い訳人間」というまことに不名誉なレッテルを貼られることになる。
 一方、いたって少数派ではあるが、言い訳を一切しない人もいる。それをしてもなんの説得力にも解決にもならないことをとくと承知している人たちだ。言い訳を恥と思い、そんなことより、実行にあたって、もっと何か効果効用がないものかと、その方策を見出すことに専ら意をおく。以前、「男は黙って勝負する」というようなコマーシャルのコピーの一節があったが、言葉よりも実行することの有用さを説くものだ。つまらぬ言い訳に費やすエネルギーがあるなら、その分実行して結果を出すことに注力することのほうがはるかに賢明だ。
 さて、この言い訳をもっともよく見抜く人たちがいる。それは直接に利害がからむお客さまだ。お客さまは想像以上に敏感だ。この営業マンはこちらの要望に対して、その場かぎりの口先で言っているのか。それとも誠心誠意の振る舞いなのか、その一挙手一投足を恐ろしいほどによく観察をし品定めをしておられる。
 断言しておく、お客さまは営業マンのもっともらしい言い訳にはとんとうんざりしているのだ。それが高じると間違いなく面談拒否にいたる。要は営業マンがどう心を砕いて、具体的に動いてくれるのかつねに期待をするのがお客さまの心情だ。言い訳をする「部下・子供」をもつ「上司・親」はきまって、日頃、自身の言い訳が多いことに気がつかなければならない。
 言い訳病は伝染する。とにもかくにも言い訳は自分にも他人にもいいわけないのだ。