093: 別れに出会い以上の意を砕け
2013.08.25
※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。
本年二〇〇四年一月七日付けを以って九項目から成る株式会社中京医薬品の倫理綱領を制定することとなった。これから会社が企業市民として、また地球市民として組織の果たすべき使命と役割及び一人ひとりの有るべき姿勢と行動指針を明文化したものである。この九項目を理解し、中京医薬品の一員として、その遵守.徹底を誓い、各自にてこれに署名し携帯するものである。
概要は次の通りである。
一、質の高いサービスの追求
二、倫理観のある行動規範
三、やりがいのある職場環境
四、積極的なコミュニケーションと企業情報の開示
五、公正で公明な取引と自由な競争
六、民事介入暴力・反社会的勢力との関係遮断
七、社会貢献活動
八、地球環境への取組み
九、役員.幹部社員の責務
さて、出会いと別れは世の常ではあるが、出会いは懇切丁寧にしても、いざ別れとなると粗末にして軽んじる人は多い。これは一体どういう訳か。出会いは、やがて巡り会いにつながって行くというのに。人間、別れの時ほど、その本性・正体を現わすものはない。
出会いから始まって、それまでの間に、どんなに格好良いことを言ってこようが、別れのときの有り様ひとつで、いとも簡単にその人間の評価は決ってしまう。世間は実に狭いものだし、また人間関係は幾世代にわたって延々と直接間接的に関わっているから、良きにつけ悪しきにつけ、巡り巡ってその因果の報いが来るようになっている。
いい別れ方は後になって陰に陽に、どこかで誰かが味方になってくれるが、反対に、悪い別れ方は波及的に悉く敵をつくることになる。「立つ鳥後を濁さず」というが鳥のようなものでも飛び立つときは、自分の去った後を濁さないように気を付ける。まして人間であるから見苦しくないように、後ろ指さされないように、きちんと後始末をすることが大事だ。
別れには、それに至るまでの事情があったり、また仮に気分のよからぬことがあろうとも、その段になれば、いさぎよさと、さわやかさがなくてはならない。周りの皆から惜しまれるようにならなくてはならない。間違っても人の迷惑やひんしゅくを買うような言動は厳に慎しまなければならない。別れというのは、出会いのとき以上にその数倍も意を砕くものだ。それが礼儀作法であり人の道というものではないか。
平成十六年一月一日