073: ギャップは志が高いほど大きい

2012.10.25

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 ビジネスの世界ほど社会に多大な影響を及ぼす戦いはない。現実は喰うか喰われるか、生か死か、勝つか負けるかの熾烈にして苛酷な世界だ。その様は人、物、金、情報のすべてにわたる経営資源と戦略戦術を駆使しての、容赦のない総力戦で、常在戦場の心構えが必須だ。
 およそ、勝負の世界には、いい勝ち方と悪い勝ち方、いい負け方と悪い負け方がある。その場かぎりの結果オーライの勝ち方は、たまたまのまぐれ当りで悪い勝ち方だ。内容をよく吟味し、その勝因をつかんでおかないと次は勝てない。
 反対に負けはしたが、その敗因をよく分析して同じ過ちを繰り返さないよう再発防止に努め、適宜先手を打っていくならば、次は勝ちへとつながる、いい負け方になる。常に、勝ち組は内容、中味を重視する。何が大事なのかよく考え、一つひとつ着実に手を打っていく。他山の石を旨として学びとっていく。負け組は結果にいちいち一喜一憂し、ノドもとを過ぎれば暑さ忘れるで、原因追求なしの場当りだから、また同じ轍を踏みつづける。
 また時の運というのがあるが、その意味は運によって左右されるということの他に、勝者にはおごりを戒め、敗者には落胆しておってはいけないということも含んでいる。ここで言う時の運というのは、ただ座して待っていたのでは得られるものではない、運をつかむためには、巡ってくるチャンスを見逃さないよう、絶えず全神経を集中し、来たらいつでも飛びかかれるような攻めの姿勢を保っていなければならない。
 さて新入社員の諸君、もはや一カ月が過ぎたが、今の心境はいかがであろうか。各人様々な思いがあろうが、これだけは断言しておく。これまで自分の思い描いていた理想と、日々直面する現実とのギャップが大きいと感じる人は将来の見込ありだ。感じない人は見込なしだ。ギャップは志が高いほど大きい。反対に志が低ければギャップは小さい。
 自己実現とはこのギャップを埋める、間断のない、積極的建設的な作業を言う。ギャップは悩みを伴うが、この悩みこそ努力している証であり、成長の母だ。だから大いに悩め。ただしだ、悩みの海に溺死するようでは愚の骨頂だ。いつの時もどこかで自分を客観視できる余裕をもっておけ。悩めども悩めども前へ前へと歩を進めよ。

平成十四年四月二十七日