思うままに No.277

2019.01.01

エッセー「思うままに」

   

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 

 明けましておめでとうございます。健康第一、いい年にできますように。

 

 おかげさまで本年は70周年を迎える。創業して10年存続できる企業は5%にも満たないと言われる時代にあってよくぞここまで続けて来られたものだと改めてお客様、従業員の皆さんをはじめ支えて下さる多くの方々に感謝したい。

 

 70周年を期して本年こそは昨年できなかったこと、やらなかったことを顧み、意をもって実行する年にしましょう。それとも来年に先延ばしにしますか。<一年の計は元旦にあり>だが、たまには一生の計として来し方、行く末を見直してみることも必要だ。

 

 常々思う。いままでもこれからも同様、一生は闘いの連続だ。その相手は他人ではなく相も変らず自分だ。「これくらいのことで負けてたまるか」と、「努力せんどいて何がうまくいくか」、「一生懸命やるで人様が助けてくれるのだ」そして「人助けてこそ自分も助かるのだ」と。

 

 「簡単に白旗をあげるな、男がすたるわ」、「人から同情されても自分に同情するな、そこからは甘えしか生まれん」と、事あるたびに自分を叱咤激励してきたところだ。そもそも人間は弱いものだ。タガがゆるむと直ぐさま易きに流され落ちていく。だからこそここぞというときには落ち着いて自分をよく見つめ、自分によく言いきかせる自分が要るのだ。

 

 さて人生100年の時代が来た。きんさんぎんさんだったか70歳は若者だと、そう言われるとそうだ。その気になると何となく若やいで力も湧いてくる。

 

 老化は退化ではなく進化だ。そこには来し方いろいろと蓄積してきた貴重な経験と知恵を活かして埋もれる潜在能力を掘り起していくことで、さらなる進化が図られる。この進化の源は好奇心だ。若いときには気づかなかったこと、あるいは無意味なものと思っていたことが齢を重ねるにつれて思いも寄らない新しい価値の発見がある。

 

 いくつになっても生き方如何で、考え方ひとつで人生は面白くも、楽しくもできる。要は人生は自前だ。自分次第でどうにでも変われる。目は衰えても若いときよりもずっと目利きは確かになり心眼も深くなる。歯の具合がよくなければ代替の道具で用は足せる。かえってゆっくり咀嚼(そしゃく)するのでものの味がよく分るようになる。耳は遠くなることから人の話は集中して聴くようになるので、よく思索をめぐらすことができる。顔のしわは人生の風雪を堪えて乗り越えてきた誇り高い証しだ。それよりも精神のしわのばしに意をおくことだ。

 

 格好いい眩しげなロマンスグレーをわざわざ何故に染めるのかもったいない。何と言っても自然体のほうが心にも体にもやさしくてバランスがとれていい。また肉体は衰えても精神はさにあらずだ。