思うままに No.255

2017.02.28

エッセー「思うままに」

   

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 

 営業の仕事が面白い、楽しいと感じるのは、お客様からの感謝や信頼を得るときだが、その証しの最たるものは力士と同様白星をあげることに尽きる。とりわけ新人さんの場合には早いうちに小さな成果がでるよう後押しをしてその喜びを味あわせることだ。

 

 モチベーションを高めるのは何よりも勝ち星が薬になる。少しずつ成功体験をしていくことによって良きスパイラルが作られていく。人はほんのちょっとしたことでも自信をもつようになると見違えるように伸びる。言うことなすことも変ってくる。自信が希望を作り、やる気が腕前を上げる。

 

 逆にうまくいかないことが長く続くと増々焦りや不安を助長し、自信喪失する。このちょっとした心配りが重要なポイントだ。自信と落胆は紙一重だ。経験上、おしなべて早い時期に成功体験をしていく人は後々に優秀な人材となっていく確率が高い。

 

 さて人柄もよく、マナーもよく、社歴も長く、知識も豊富なのにいまひとつ成果が上がらないのは何故か。それは一言でいえば営業の本来の目的が分っていないからだ。営業力とそれらは必ずしも比例するとは限らない。営業力とは継続して買ってもらえる力を言う。そのためにはお客様が何を望んでいるのか、その欲求と要望を探し当てることに目を皿にし、耳を立てて意を注ぐことにある。

 

 営業マンは商品の良さ(欠点も含めて)を分り易く説明し理解して頂くことにあるが問題はその先にある。購入して頂き、実際に使用して頂いてこそお役に立てる。言うまでもないがどんなに美しいものでも話だけでは分らない。実際に食べてみなければ分らないではないか。

 

 成功するにはいくつかのステップを踏むが、売れるか否かその分れ目はひとえにクロージングにかかっている。ここが営業の肝だ。いくら知識を披ろうするも肝心のクロージングに踏み込めない原因は、お客様に嫌われはしないか、悪印象をもたれはしないかという妙なためらいや不安をもつことにあるようだ。

 

 このはっきりしない態度がお客様には頼りない不安や不信感を抱かせ不調に終わる。お客様はふん切りがつかず少々惑うものだ。その際に自信をもっての一言を待っているのだ。これがお客様心理だ。

 

 商品を使用することによって得る良さをイメージして頂き、様子を観て購入の決断を促すクロージングに移ることが大事だ。この時点で営業マンは売る人から離れもうひとつの役は第三者となり、よき助言をする人にまわるよう一人二役できなければならない。重々営業の目的は商品を使って頂き良さを実感して頂くことにある。

 

 お客様が本当に期待するのは商品知識でも説明上手でもない。すすめられた商品を使うことによって得られる効果・効用や心地よさを求めているのだ。