思うままに No.235

2015.06.30

エッセー「思うままに」

   

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 ずいぶん前のことだが鳥羽水族館の中村館長を訪ねた折に、健康についての話題になった。「山田さんねぇ、私も長いこと人間をやっているが、ストレスには縁がなくてねぇ。敢えて言えばストレスのないのがストレスかなぁ。近ごろはストレス、ストレスと言い過ぎかもしれないねぇ。」と高笑いをされていたことが思い出される。

 ストレスがあってもそれをストレスとして感じないのは精神の耐性が強いのだろうか。ストレスの感じ方、捉え方は人によって様々だ。彼の場合は接していていつも感じるところだが、他に類を見ない究極のプラス思考の持ち主に思えてならない。

 この頃は何でもかんでもストレスは害だと悪者扱いされるところだが、果してそう決めつけられるものだろうか。

 ウィキペディア百科事典によれば「ストレスとは生物学的には何らかの刺激によって生体に生じた状態を言う。その原因は物理的ストレッサー(寒冷、騒音、放射線)、化学的ストレッサー(酸素、薬物)、生物的ストレッサー(炎症、感染)、心理的ストレッサー(怒り、不安)に分類される。

 ストレス反応とはホメオスタシス(恒常性)によって一定に保たれている生体の諸バランスが崩れた状態から回復する際に生じる反応を言う。

 ストレスには生体的に有益である快ストレスと不利益である不快ストレスの二種類がある。これらのストレスが適度な量だけ存在しなければ、本来的に有する適応性が失われてしまうためから適切なストレスが必要である。

 アメリカで成人三万人を対象とした八年間にわたるストレスと健康との関連について調査した結果、ストレスが健康によくないということを信じていない人の死亡率は非常に低かった。この八年間でストレス=害と意識したがために死亡した人の総数を十八万二千人と推定するとアメリカ人の死亡の第一五位で、これは皮ふガン、エイズ、殺人よりも上位となる。

 この結果から科学的にはストレスの捉え方次第で体の反応が変わる。例えばストレスを感じると心臓がドキドキするが、これを悪いとネガティブに捉えると血管が収縮して心不全の原因となる。ところが心臓がドキドキするのは新鮮な血液を心臓にどんどん送り込んでくれているのだとポジティブに捉えると血管は収縮しないことが分かった」と。

 植物などはひねったり、切ったり、縮めたりしていたぶると生命力、生長力が格段に高まるということをよく耳にする。生物の一員である人間もストレスを肯定的に捉えれば抵抗力、免えき力が増強する。

 複合的な心理的社会的ストレッサーに過剰反応は禁物だ。人を不快にする鈍感はいただけないが、自分の受けるストレスには鈍感であっていい。また矢でも鉄砲でももってこいというぐらいの開き直りもあっていい。