思うままに No.222
2014.05.31
※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~
残念ながらどういう訳か商品(什器、備品、消耗品、印刷物等々)は金だという意識が希薄に思えてならない。もし倉庫に商品に代わって札束が積まれていたらどうするか。気にしないでいられるか。誰しも入出庫、在庫の把握、管理には正確を期して、リスクを考えて対応することになろう。実のところは、支払いを済まして買った大切な代金は商品という形に変わっただけで商品は紛れもなく金そのものだ。
倉庫には棚に商品という金が積んであるのだ。まさしく倉庫は金庫と認識するのは当然のことだ。企業活動は先ず金を用立てし、仕入を通して金を商品に代え販売をしてまた金に代える。このことを終始バランスよくくり返して成り立つ。
商品に限らず人についても同じだ。働いて付加価値をつくりその対価として金を得、その金を使って生活をし、また働き続ける。従って金と全く同等物である商品をぞんざいに扱い滞留させれば劣化、減価をまぬがれない。また同時に大事な金を目減りさせる。
商品は在庫期間が長びくほど大きな痛手をこうむる。ときには命取りにもなる。勘定あって銭足らずというように。何よりも過剰な無駄な在庫は大罪に値する。商品はいかに速くお客様のお手元に届け、使っていただいて初めてその役目を果たす。商品の居場所はお客様の所である。
倉庫で不本意にも眠らされる商品はほこりをかぶりさぞかし泣いていることであろう。居心地が悪く倉庫から一時でも速く出して欲しいと叫び声が聞こえる。商品は、生ものだ。とりわけ期限切れ、破損、廃棄は商品にとっては、生き地獄だ。本来ならば手厚く供養でもしなければならないところだ。
肝に銘じておこう。商品在庫は「必要なとき、必要な分を必要なだけ」にせよ。買いだめ余分なものは一切合切不用とせよ。
日々家計を預かり上手に生活をきり盛りする賢い主婦の知恵を見習わなければならない。彼女たちは冷蔵庫の食料品の在庫管理を始め買い物には決して無駄を出さないようにするだけでなく、在るものを工夫し上手く活用する。また、出すゴミなどは、いたって少ない。
ある農家の人の話には反省させられる。
「せっかく丹精をこめて作った野菜を腐らせ捨てられてしまうのは辛くて悲しいことです。もったいないというより非情な仕打ちをされたと残念でなりません。新鮮なうちに美味しく食べて欲しいと誰よりも一番願っているのは私よりも野菜さんのほうです。」と。
一円を粗末にする者は一円に泣く。一品を粗末にする者は一品に泣く。
一人を粗末にする者は一人に泣く。
人も金も物も皆同じこと。努めて大事にする気持ちと実践が切に望まれる。