思うままに No.202

2012.09.28

エッセー「思うままに」

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 「ミソとクソを一緒にする」という言葉がある。どちらも一見似てはいるが、言うまでもなく、全くの別物だ。目的と目標についても同様だ。目的と目標は自ずとその意味する
ところは異なる。目的とは永遠に目指していくもので限りはない。一方目標とは目的を実現していくためのひとつの手段であり、その過程としての一里塚に過ぎない。目的のないところに目標はありえないし、目標の達成なくして目的の実現は叶わない。
 さて、佐々木監督率いるなでしこジャパンが何故に強いのか、かくも観る人たちを感動させるのか。当然チームは勝負に尋常ではないもの凄い執念を燃やす。勝負のその前に選手諸君は不断より念頭に入れて試合に臨む。その前とは何か。それは女子サッカーの素晴らしさや魅力を社会に広く知らしめたいこと、少年少女に夢と希望と勇気をもたせたいこと、頑張れば私たちのようになれるという強い思い=目的だ。この強烈な目的意識が強いチームにつくり上げた。
 かつて女子マラソンの名監督小出さんが一流のアスリートに育て上げた高橋尚子さんに教育指導のなかで常々口にしていることがあった。いまこの過酷ともいえる練習もオリンピックの優勝の目標もすべて目指す目的のためだ。その目的とはマラソン競技を通して切磋琢磨して立派な人間につくり上げるのだと。またそのことをしっかり肝に銘じ猛練習に耐え励むところに高橋選手の人間としての素晴らしさがある。
 「いまあなたは何をつくっているのですか」と通りすがりの旅人に問われた塀作りの職人さんが「私は塀ではなくお城をつくるためにレンガを積んでいるのです」と。なでしこジャパンの選手も高橋さんも職人さんも目的と目標の違いを認識し目的をもつことが如何に大事なことかを教えてくれる。
 このように我々の所属するチームである企業も全く同じだ。先ず経営の目的は何か。それは経営理念であり、より愛されより親しまれる企業を目指して広く社会に貢献することにある。その実現のために達成すべく部門の各々の目標がある。目的を共有し目標を達成してこそ企業の価値向上と存続があるし、またほんとうのやりがいが生まれる。
 常に何の為に=目的をもってこそ仕事に誇りと自身がもてる。