思うままに No.191

2011.11.01

エッセー「思うままに」

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 惰性にありて改革なし、改革なくして成長なし。世界には何百年にも永きにわたって生き続ける企業がある。その存続している最大の共通項は惰性に流されない、絶ゆまざる改革に尽きる。過去のやり方に固執していたら間違いなく、今日までの存続はなかったであろう。
 さて、方針・戦略に従って人事・組織・業務等の見直し、あるいはそれに伴う諸々の経費の節減は何のためにやるのか。一言でいえば、成長分野に向けてタイムリーかつ効率よく有限の人・物・金を投入して企業の存続発展を図ることにある。業務のムダ・ムリ・ムラを廃することによって創出する経営資源を活用して、見込みのある分野にそのエネルギーを集中して成果を上げることにある。
 ムダ・ムリ・ムラは至るところにある。気がつかないか、それとも気がついていても放置しているのかのどちらかだ。これは船底を被うカキガラのようにへばりついている害あって益なしの厄介ものだ。これらを除去するには、先ずやるべきことは一度白紙に戻して業務本来のあるべき姿を描くことから始まる。次に従来からやっている現状を否定し、疑ってかかることだ。
 この業務は部門間にとどまらず、全社最適の見地からもほんとうに有用なのか、果たして必要性があるのか、貴重な時間と労力をかけるだけの価値があるのかを。業務の目的はシンプルで分かり易く明確でなければならない。そして重要度と優先度を具体的に仕分けることだ。おおよそ、どうしてもやらなければならないことは1/3になる。残りの2/3はあってもなくても大勢に影響はなし。ムダ・ムリ・ムラの多くは惰性の産物だ。以前からこうやってきたのだからということではそこに思考というものが全くなしだ。
 人間も組織も惰性に流される習性をもつ。しかし惰性では変化に対応できるものではない。今日は昨日と同じではないし明日もまた違う。状況が刻々と変わっていくのに、過去の延長線上に安住すれば即臨終だ。よく経営の教科書に出てくる選択と集中も変化に対応すべく、存続するための合目的的かつ生物学的・本能的な知恵だ。
 惰性は恐るべき大敵だ。希望を奪い、思考を止め、意志の力を削ぎ前進を阻む。日々新たな気持ちでもって惰性を葬り、成長に向けて改革を推し進める具体的な実践しかない。
 皆の知恵を力を結集して丈夫で長持ちする企業にしていこう。