思うままに No.249

2016.08.31

エッセー「思うままに」

   

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 

 このほど当社にとってこの上ない誇らしい出来事があった。ニセ電話詐欺被害を未然に防止したとして、岩倉営業所の鈴村君が警察署より感謝状をいただいたことだ。

 

 お客様(女性76歳)宅へいつものように訪問したところ「株をやったの?2百万円が必要なの?」と電話で誰かと話をしている場面に出くわした。娘から「友人と株を買って、会社の金で損失を出してしまい、金が必要になったと言われた」との説明を受けたため、そこに居合わせた鈴村君がとっさにニセ電話詐欺と疑い直ぐに110番をした。駆けつけた警察官がお客様の実の娘に電話で事実確認をしたところ詐欺と分かり、すんでのところで被害を免れた。

 

 こんな嬉しいことはない。改めて鈴村君には敬意と感謝を表したい。これこそ当社が目指す人づくりの証しだ。ご高齢のお客様のことを日頃より常に気をかけ、親身になって接しているからこそこの素早い気転で災難から救えた。これまさに私たちの標榜する<ふれあい業>の成せる業だ。

 

 私たちは単なる物売りではない。お客様に密着して、心を通い合わせ少しでも健康づくり幸福づくりのお手伝いをさせていただく誇り高い仕事だ。これもまた<トータル・ライフケアー>推進の一環といえる。とにもかくにも普段よりお客様にどんなことでもいい、自分のできることで何かのお役に立つことはないかと、念頭におくことが大事だ。

 

 配置業は薬を置く前に心を置く業だ。心を配って信頼・信用を得てこそ成り立つ業だ。胸をはれる誇らしい人間業とも言える。かつてその昔、私たちの先人は西に東に廻商地が災害冷害にあえば米・塩を背負って一軒一軒被災地のお客様のもとへ救援に馳せ参じた。お客様は自分の家族と思い<先用後利>の実践をしてお客様と共に悲しみや喜びを分ち合った。

 

 また数々の縁結びのお世話をし、お客様から頼まれれば仲人の大役も引き受けをした。これもまたお客様との固い信頼関係ができているからこそできることだ。昔から幾多の先人たちが培ってくれた信頼・信用の所産があったればこそで、いまの配置薬業を支えてくれているものと改めて痛感する。商いの道は人の道、世のため人のために日々精進することにある。人を助けてこそ自分も助かる。

 

 商品を売るというのは、その行為の前に心を買っていただくようにしなければならない。商いの量は心配りの量に正比例する。ただし、心配りには自ずと質が問われる。その本質は利他の心に由来する。