084: 所有の時代から活用の時代へ
2013.04.10
※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。
優れた人は何事につけてものの活用が上手い。もちうる知識や経験を自由自在に組み合せ、加工し、臨機応変に対応していく。
例えば英会話では主要な単語は一〇〇ぐらい知っておれば適当に組み合せをし、あとは身振り手振りで日常生活には困らないという。日頃私たちは見たり、聞いたり、教わったりして、それなりに知識や経験の在庫があるが果して実際に役立てているだろうか。ただもっているだけで活用せず宝の持ち腐れにしているのではなかろうか。
これからは所有から活用の時代だ。どれほど知識があっても活かすことができなければ意味がない。物知り博士より活用名人の方がうんと有用だ。大事なことは、知識を加工し、アイデアを付加していかに知恵のレベルに押し上げていくのか、インプットした様々なものに思案を巡らせて、練り込み、いかにアウトプットしていくのか、受信したものを吟味、咀嚼し、かたちを整えていかに他へ発信していくのか、である。
また会議でよく思うことがある。先ずテーマをどの程度に理解しているのか。何故にこのテーマがあがってきたのか、などなどその背景や理由にまで考えが及ばなければならない。少くともそのことを考えて臨む人とそうでない人とでは参画度や充実度という点からえらい差ができる。
そのためには日頃より問題意識、危機意識をもっていなければならない。「なぜ」「もっといい方法はないのか」「こんなことを続けていてこの先いいのだろうか」「私の考え方、やり方のどこが悪いのか」「社長だったらどうするだろうか」「自分がお客さんだったらどう思うか」等々。
そもそも問題意識というのはもっとレベルを高めたい、上達したいという思いをもつことから生れてくるものだ。平々凡々の状況からよりも飢餓感や切迫感からできてくるものだ。
さて会議を進行していくとき、有意義か否かは意見、質問の量より質が問われる。いかにタイムリーに核心をついたものが飛び交い、連鎖反応を起し、活発化するかである。いい意見、質問は日常の現場で、様々な壁にぶちあたり、試行錯誤し、悩み苦労するなかから生まれる。心中から滲み出てくるような言葉に切実さと実情が痛いほどに伝わってくるものだ。
それからもうひとつ、自分が座長になったつもりで臨むといい。受動と能動の違いもさることながら、視点が変わり、広くものごとが考えられるようになる。
会議はいい学習の場だ。
平成十五年三月三十一日