081: バカげた苦手意識
2013.02.25
※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。
お面白い話を聞いた、なるほどと思う。
マメ科のインゲンのつるは根本から見て、時計回りの右巻きで生長していく。これを人為的に逆らって左巻きにしたら、右巻きに比べて収量が2倍に増えたそうだ。そのときの実験はインゲンを三つのタイプに分けた。
Aはつるを自然のままの右巻きにした。
Bはつるをまっすぐに伸びていくようにしばっておいた。
Cは無理矢理に左巻きにしばっておいた。
毎日、当初の計画どおりに、つるの巻き具合を見て手を加えていった。その結果サヤの収穫に差がはっきりと出た。自然のままの右巻きのAに対して、真っすぐにしたBは1,5倍、左巻きのCは2倍の量だ。そしてサヤの大きさや重さは3タイプともほとんど差がないということで、自然に逆らわせるほど収量が増えることが分った。つまり逆巻きにすることでその刺激がインゲンに適当な緊張をつくり光合成が活発に働いたのである。
このことから研究者は人間の成長も植物の成長も同じことだと言及している。世の中には今まで是としていた常識を非として考え非常識にやってみると思わぬ新しい発見がある。また適当な緊張は能力を倍加する。得手なことより、むしろ苦手としていることの方が、それだけに緊張感が持続して、眠っている多種多様な潜在能力を呼び醒ますのだ。
大抵、苦手意識は食わず嫌いか、もしくは過去の経験による思い込みからであるが、これまで長らく使われずに封印されてきたが故に、人間の持つ、さまざまな能力の埋蔵量たるや相当のものだ。もったいないことにそのほとんどが宝のもち腐れになっている。
誰しもときに経験することであるが、無意識にやっていたら意外と上手くいき自分でもびっくりすることがある。今までの苦手意識は何だったのかというように。こうなると人間は現金なもので苦手から得手へと見事に変身していくのだ。
そもそも苦手意識という代物は持つほどに、ことごとく自分の可能性の芽を摘んでいく。百害あって一利なしの厄介ものだ。ガン細胞のごとくしつこくつきまとわりつき、これ幸いにと我がもの顔で増殖し続ける。放って置くとそのうち手遅れになる。それで苦手意識の原因についてなぜ、なぜと問いただしていくとほとんどが要領を得ないのだ。さしたる理由が見当たらないのだ。
結局は、茫洋としていて何んとなくなのだ。何とバカげたことか。
平成十五年一月一日