079: 人ふれあい業
2013.01.25
※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。
人と人の関係と同様に、企業と社会の関係は、先ず何よりも信頼と信用をもとに成り立っている。昨今の企業の不祥事は決定的にこの認識不足からきている。
信頼と信用を失くすのは犯したミスそのものよりも、むしろそのことを隠そうとしたときの方が大きい。結果的にはその傷口を深くしてしまう。その非を率直に認めた上で、誠心誠意陳謝をし、今後は再発しないように的確でスピーディな対応が求められる。
いまの時代何が起こるか分らない。これからの企業活動はますます危機意識、危機管理が大事になってきた。危機管理とは常に最悪の状況を考え、取り越し苦労をすることから始まる。万が一に備えて、ムダ骨をを折ることだ。結果オーライで「何も起らなかった」ではなくて普段より「何も起きないようにしておく」心構えと備えが肝腎だ。
考えてみると危機管理の範囲は多岐にわたって広い。顧客、商品、金銭、広報、人事、構造物、設備、車輌、時間、自己の管理、営業スタイル、指導、育成、人間関係、人間観、仕事観、人生観等々。
ひるがえって、私たちの仕事は地域に密着し一軒一軒一人一人のお客さまと直接に関わっていく人ふれあい業だ。ふれあいとは信頼をもとに、ほのぼのとした温もりや安らぎが通い合うさまを言う。絶えず心を配りながら、お客さまからありがとうの笑顔をいただく仕事なのだ。そして売上高とは正しくはお客さまへの役立ち高なのだ。
今日はためになる話やいい商品を置いてもらった。次回はいつ来てくれるのかと、お客さまに心待ちにしていただけるような営業でなくてはならない。
いま、毎日全社でおおよそ一万人のお客さまと接している勘定になるが、その一人ひとりのお客さまは大なり小なり弊社のメッセンジャーだ。これを広告宣伝に見たてるとしたらとてつもない力になる。ただしだ、これが悪いメッセンジャーになるとしたら、たいへんだ。
「悪貨は良貨を駆逐する」で、ひと度悪事、不始末が起きようものなら今までの数々のよきメッセージも信用も一発で吹き飛んでしまう、これが地域密着型の怖さだ。
とにもかくにもお客さまを強力な味方にしなくては。そのためにはお客さまが、本当に望んでいることは何なのか、いま自分ができる最善は何なのかを念頭におけ。でないと社会から退場を余儀なくされる。
平成十四年十月三十一日