078: 観客との一体化ステージを目指せ

2013.01.10

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 人間の欲求というものはとめどもなく高くなっていくものだ。だからお客さま満足を得るには、ただ言われたことだけに対応しているようではダメだ。お客さまがどうしてもらいたいのか、言われる前にその意をくみ、察する気配りがなければならない。言われてからやるのと、言われる前にやるのとでは大違いだ。
 お客さま満足のためにいかに質の高いサービスができるかであるが、それは常に相手の立場になっての、細やかな気配りから始まる。
 伝説的な顧客サービスを実践し、急成長を遂げている米大手百貨店ノードストロームのベッツィーサンダース元副社長がサービスの哲学を次のように説いている。
 企業と顧客との出会いの第一段階は支払われた金額に応じたサービスを提供するという「交換」のレベル。そこから一歩踏み込んでその交換を「拡大」することでサービスは向上するが、さらにその上の「顧客との一体化」のレベル、つまり顧客と企業が一体感を抱くような、双方が利益を共有する方法をとることで最高のサービスが提供できる。
 ここで実際にあったサウスウエスト航空の話を紹介しよう。
 クリスマスを前に同社にある顧客からこんな依頼が舞い込んだ。言わく、夫婦二人で娘と孫に会いに行こうとチケットを買ったが、妻の病気が悪化して旅行は不可能になった。娘と孫がこちらに来られるよう、このチケットを振り替えてもらえないかと。
 担当者はクリスマスの非常に混む時期であったにも関わらず、直ちに航空券を再発行した。おかげで夫婦は娘たちと幸せな時間を過すことができた。
 さて企業と顧客の出会いの第一段階は料金と航空券の「交換」というレベルだ。ここではチケットの再発行といったサービスの発想は出てこない。だがもう一つ上のサービスを考えるなら、サービスの「拡大」を考えるようになる。このケースなら多分「娘さんとお孫さんの航空券は別料金を頂きます。ただし以前にご購入済みのチケットは別の機会に振り替えができるよう手続きいたします」というような話になるであろう。
 サウスウエスト航空が提供したサービスはさらにもうひとつ上の「顧客との一体化」と呼ばれるステージに位置する。サウスウエスト航空は売上や利益を損ねることなく、(すでに二人分の料金はいただいている)夫婦に最大のサービスを提供したのだ。
 しかも、加えて、無料の協力な広告宣伝マンも得ることができた。

平成十四年九月三十日