059: 礼に始まり礼に終わる
2012.03.25
※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。
難産の末、アメリカ合衆国第四十三代大統領にジョージ・W・ブッシュ氏が就任した。その演説の内容は多くの示唆に富み、深い共感を覚えた。
「国民の統合と団結は指導者と市民にとって真剣だ仕事だ。われわれは礼節、勇気、思いやりそして品格をもって、国家としての前途を切り開かなければならない。われわれは使命を全うしなければならない。礼節は戦術でも感情でもない。礼節は冷笑よりも信頼を、無秩序ではなく、秩序ある共同体を心して選ぶことだ。思いやりは政府の仕事というだけでなく、国民の仕事だ。米国は自己責任が尊重され、かつ期待される場所だ。われわれの公共利益は市民としての義務、家族のきずななど個人的な人格に依存している。自由と共通の利益を守っていく上で、攻撃と邪悪な考えには断固たる決意と力で挑む。私は礼節をもって信念を貫き、勇気をもって公共の利益を追求するより大きな正義と思いやりの代弁者となり責任を果たす。私はこれらの原則にのっとり、米国を率いていくし、生きていく。皆さんのすることは政府が行うことと同様に大切なことだ。個人的な安楽を超えた公共の利益をもとめ、まず隣人と共に国家に奉仕してほしい。傍観者ではなく、従属者でもない、責任ある市民になってほしい。」
演説のキーワードは礼節、団結、信念、勇気、正義、思いやり、品格、自己責任だ。国家経営に企業経営もその使命とあり方において同様、多くが重なる。
さてビジネスの世界は常に結果が問われる。ただしだ、大事なことはその中味に目が向かなければならない。
勝負の世界には悪い勝ち方、いい負け方がある。よく吟味せず、その場かぎりの結果オーライは先のことを考えるとためにならない。結果さえよければ、方法手段は選ばず。自分の数字さえよければお客さまはどうでもいい、お年寄りだから分からんだろう等々というように社の理念や本分を違えたら、その末路は会社も個も存在を失くすこと必定である。
こうした非道は厳として、是は是、非は非のけじめをつけなければならない。お客さまのお役に立つ、その姿勢はどうあるべきかよくよく考えてほしい。
また、人と業績というのは、丁度心と体の関係がごとく一体のものだ。人づくりと業績づくりはあちらを立てればこちらが立たないというような二律背反ではなく、それぞれが密接にして不可分なもので、相互に及ぼし合い相乗的に向上していく同一の命題だ。
武道も商道も人道も同様に礼に始まり礼に終る。人みな道にあってよく礼を正し、身を修め、自らを高めていくところに人生究極の目的がある。
平成十三年一月三十一日