046: 飛躍と挑戦の正夢

2011.09.10

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 時はあたかも二〇二五年十一月吉日
 三〇数万坪に及ぶ森と湖に囲まれた景勝の地に、まばゆいばかりの白亜の本部社屋と林を挟んで隣の広場に設営されたドーム状のテントが今回の創業七五周年記念式典の開催会場だ。晩秋のこの時期にしたのは、赤々と燃える山々に、更なる飛躍を期しての熱い情熱を重ね合わせたいとする想いからだと聞いている。この敷地内の施設は瀟洒な本部社屋の他、研究所、研修場、宿泊棟、食堂、温泉浴場、運動施設、多目的広場からなる。全国三五〇ヶ所の営業所、支店、海外拠点そしてグループ、関連会社から一〇〇〇余名の幹部が一堂に介する。まだまだエンドレスに進化分化発展する中京医薬品だ。
 早朝からヘリポートでは数機のヘリがけたたましく、あたりの静けさを突き破って離着陸に慌しい。私はというと前日より入り、全国あちこちから集まってきた懐かしいOB連中とお互いの息災を喜び合いながら、好きな温泉につかったり、夕食を共にしての楽しい嬉しいひと時を過ごさせてもらう。
 皆ももういい加減に七〇、八〇の齢を過ぎているというのに、すこぶる元気がいい。それぞれ一〇歳も二〇歳も若く見える。いつまでも当社経営理念の健康づくりが板についている。というよりは体についている。今なお中京マンたちだ。かつては苦楽を共にし、頑張ってきた面々だから、さぞかし昔話にばかり花が咲くだろうと思いきや、さにあらずで話の主題はこれからはああしたい、こうしたいと将来のことに体を躍らせ目を輝かせている。人生はかくあるべきで、本当に一生青春、一生現役の幸せ者達だ。
 さて本日の式典会場はテントから湯気でも立つかのように、熱気と活気でムンムンだ。皆々はトップの方針ビジョンをはじめ、経営陣の希望と信念に満ちた、力強いスピーチに、程よい緊張感も手伝い、新たなる目標と決意の念でその顔は紅潮している。壇上に掲げられた記念のスローガン“さらなる飛躍・たゆまぬ挑戦”の大きな文字が否が応でも目に飛び込んできて心に焼き付けられる。OBの連中と共に前列に陣とっている私もその素晴らしい雰囲気に飲み込まれてメラメラと音を立てて闘志の火が燃え始めるようだ。もう引退して幾久しいというのに。
 そこで会議も半ば頃か、司会者からOBの紹介ということで、席を立とうとしたとき、不覚にも手を滑らせてひっくり返るところで目が醒める。新ミレニアムの楽しい初夢をみた。これはまさしく正夢だから、後々の為にもしっかりと記憶にとどめておこう。

平成十二年一月六日