039: 水鳥の足にひまはない

2011.05.25

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 過日の第二二期事業説明会の折、年次各賞の受賞者の皆さんと懇談会をもった。その感想は各人ともさすがにいい顔をしているということだ。目つきが違う。いたって謙虚である。敢闘賞をとった両君の話が心にのこる。二人とも今年で勤続四年目に入るが、ようやく3年目のときに「何かに」気づいたようだ。もっともこのことは、人一倍、所長の教育指導(心を鬼にしての深い思い入れ、ほんとうのやさしさからくる、安易に妥協を許さないほんとうの厳しさ)によるところが大きい。
 察するに、これまで幾度となく同じようなことを言われてきたはずなのに。何故に三年目にして「何かに」気づいたのであろうか。その「何かに」とは、気まぐれや薄っぺらな願望や他人だのみではなく、やはり当人のしっかりとした主体性と自主性、明確な目標をもったこと、何とかしなければという渇望感やハングリー精神だと思う。
 たとえ環境条件や上司に恵まれても、所詮当人の気持が変わらなければはじめから叶うことではない。両君が口を揃えて、最近仕事が面白くて仕方がないと言う。こうなるとしめたものだ。仕事が面白くなると、自然に仕事が上手になる。上手になるからまたまた面白くなる。ヤルとヤラサレルでは雲泥の差だ。ヤリガイができるし、健康にいい。ますます人間力が違ってくるし、人生力が豊かになってくる。
 もう一つは新人賞をとった方であるが、帰社してからでも、時には寝るのを忘れての勉強に勉強、まさに誰にも負けない努力だ。それが苦痛かというとそうでもない。強い意識と明確な目標があるからだ。
「ただ見れば 何の苦もなき水鳥の 足にひまなき 我が思いかな」
 一見のんびり遊ぶ水鳥も、水面下の見えないところでは相当の努力をしている。受賞された方々には心より敬意を表すると共に、これからも驕ることなく、さらに前へ前へ、上に上に、高く高く登っていってほしい。
 さて、新入社員の諸君も、はや一ヶ月が過ぎた。人生の本番実社会はいかがか。もともと理想と現実のギャップは至極当り前のこと。理想が高いほどそれは大きい。それどころか、常に前向きの人には死ぬまでそれを埋める努力精進を求められる。初心を忘れず頑張って欲しい。そして同様に、先輩社員諸君も初心にもどってはやく気づいてほしいものだ。
 初心とはほんとうの我に振り返ることだ。自分のよって立つ原点を再確認することだ。初心にはあらゆる問題解決の答えがある。自分を奮い立たせ、それは自己実現のためにも最も有効なモチベーションだ。

平成十一年四月三十日