037: 悪条件は文明の生みの親
2011.04.25
※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。
文明の進歩発展は条件がすべて整い、充足されている状況下よりも、不備・不足・不自由な状況のなかで、必死に脱却しようとする強烈な熱情や努力と工夫に起因する。あれも足りない、これも足りないと不平不満をたれ、もっともらしい御託を並べているうちは、前に進めない。常にいまできる最善の方法は何かを突き詰めていくことだ。その意味で不備・不測・不便・不都合・不合理・不経済等々の悪条件は言わば文明の生みの親であり、進歩発展の種子である。
文明という文字を会社に置き換えてみよう。その進歩発展は悪条件をテコにして知恵を絞り出すところに、有形無形の利益の創造がある。会社の利益は全従業員の熱意と努力と工夫の総和から生れる。この利益の源泉をどう掘り起し、どう汲み出すかは、ひとえに一人ひとりの意識と行動のいかんにかかっている。一人ひとりのもう一工夫ともう一歩は総和されて驚異的な力を発揮する。
他方、組織には、それぞれの部署の使命と役割があるが、「となりの人は何する人ぞ」ではその連携を欠いて組織は成り立たない。会社の組織は船のそれと同じだ。船の乗組員は操縦士、機関士、甲板員、まかない係等々いろいろの役割分担で組織される。もし航海中に船底が何かの事故で破損して、水が流入してきたとき、乗組員が自己本位のなわばり根性であったり、四角四面の教科書至上主義であったり、規則や役割がどうだの、前例がどうだの、はたまたいまのシステムがそうなっていないだのと言っていたら、早晩船は沈没だ。
時と場合によっては、背に腹は代えられない。型破りは危機破りなのだ。非常識が良識なのだ。理屈は後からなんぼでもつく。口惜しきこと、忌まわしきことは実効のともなわないへ理屈だ。船も会社も結局は船底一枚の上に成り立つ運命共同体だ。血の通う連携、臨機応変、総合かつ柔軟な思考と対応が活き活きとした力強い組織風土をつくる。そのためには日頃より大所高所に立つ見地と他部署(他人)にも心配りできる心のゆとりを養っておくことだ。
「全社一丸、一致団結」この力強い美しい言葉は互いに連携補完し合う組織プレー、チームプレーを推し進めていくところに、その輝きを増す。
MAY I HELP YOU ? 他人助けてこそ、はじめて自分も助かる。
平成十一年二月二十六日