030: 勝負は結果がすべて

2011.01.10

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 多くの国民の期待を一身に受けての日本サッカーチームは、健闘も空しく残念な結果に終った。
 試合後、岡田監督の経験・さい配能力・個とチームのレベルや力量等々の問題について、いろいろな論議が交わされたが、結論を言えば岡田監督のリーダーとしての姿勢は大いに評価したい。部外者には到底、図り知れない当事者のみが抱える様々な胸の内を考えると、試合前試合後を通じて、彼なりの信念を貫いたことに敬意を表したい。
 もとより、勝負は結果がすべてだ。
 勝敗は、ときの運と言えども、それを上手く取り込んで勝ちにつなげていかなくてはならない。賢者は負け試合から学び、教訓にして次へ活かすが、いつまでも勝利の美酒と歓喜にはどうやってみてもひたることはできない。いつの時も、勝負の世界を魅了するのは、お互いの執念と心技体によるぶつかり合い・せめぎ合いにある。
 その必死の闘いに勝負の実と華がある。この時、予想をはるかにこえる数々の奇跡とも言える技と力が生まれる。そしてさらに、観客と選手が一元化・一体化して、魂のふるえるような興奮と感動の嵐をまき起すのだ。いかなる勝負の世界もかくあるべきだ。
 にもかかわらず、参加することに意義があるというようなたわ言は、勝負の世界では許されるものではない。このたわ言は、そもそも相手チームにも観客にも失礼であるし、負け組の惨めたらしい弁解やまやかしであって、心ない逃げ口上に過ぎない。
 もう一つは、勝負には勝ち負けはつきものだが、どちらにせよ、その後の態度や姿勢が、これまた大事である。それは心の勝ち負けを言う。試合に負けても心の勝負に勝つことができる。
 その意味で、今回精一杯善戦した岡田監督の「敗軍の将兵を語らず」毅然としたリーダーとしての様相と冷静沈着な言動に、いつにないさわやかな清涼感を覚えるし、これからさらに大きな期待を寄せるだけの人物に思えてならない。
 さあ、今からがスタートだ。大いに楽しみだ。

平成十年七月一日