020: 自分以外の人はすべてお客さん

2010.08.10

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 おかげさまで当社は本日八月一日をもって店頭登録による株式公開を果すことになりました。三〇〇有余年の歴史ある業界として初めてのことだ。これもひとえ(ひとえ歴)に各地域のお客様、株主の皆さん、社員取引先の皆さんをはじめ、多くの方々のご愛顧とご支援の賜ものと深く感謝しております。このことはプライベートカンパニーからパブリックカンパニーに変ることであり、名実ともに業界のリーディングカンパニーになることである。
 ここで特に肝に銘ずべきことは、これから会社はすべて業績で評価されるということである。タラ、レバや過程の話、あるいは希望的観測は一切通用しないのである。ものを言えるのはすべて結果の事実だけだ。厳しさもあるが、反面それだけ社会的に大きな期待を寄せられるということで、大いに闘志と意欲がわくところである。代表責任者として、その使命と責務は痛く骨身にしみるものであり、また身の引き締まる思いである。
 ここに至るまで約五年の年月がかかったが、いま振り返って実感することは、おおよそ次の五点に尽きる。
(一)念ずれば花開く。どんな時であろうとも、将来のあるべき姿をありありとイメージしながら必ず出来ると絶えず自分に言い聞かせる。
(二)夢や目標は大きいほどよい。どれだけ大きくても、一銭も税金はかからないし、他人さまにも迷惑はかからない。それどころか楽しみにしてくれるし、喜んでもらえる。目標が大きくなればなるほど、それに向けての一層の工夫や努力が不可欠なので、その過程において、自然に能力の向上や自己鍛錬もできる。大きく大きく、高く高く、前へ前へと考え、そしてやればやるほどにまた足下もしっかりと見つめるようになるので間違いが少ない。反対に中途半端はためらいや煮え切らないため前へは進めないし、ものがきちっと見えなくなる。そして同時に責任転嫁が多いので始末が悪い。
(三)独りの力は有限、他人さまからの力は無限だ。そして自分以外の人は皆すべてお客さんにしてしまうことだ。お客さんになることは快感かもしれないが、お客さんにしてしまうことは、それとは問題にならないぐらいの無上の歓びがある。
(四)自分をよく生かすと、自然に他人さまからもよく生かされるものだ。
(五)常に感謝の気持ちをもちつづける。のどもと過ぎれば暑さ忘れるは人間そのものを問われる。受けた恩は決して忘れてはならない、忘れなければならないのは仇だ。
 さて株式公開の主たる目的は一にも二にも人であるが、その重要なテーマは次の五点であることを確認しておく。
(一)もっとお客さまのお役に立とう。お客さまの家族の一員がごとく接し、より良きパートナーになろう。
(二)もっと業績をあげて株主の皆さんに喜んでもらおう。
(三)社員の皆さんには、自信と誇りと希望をもっていい仕事をしよう。
(四)取引先の皆さんにあつい信頼をいただけるよう、さらにパートナーシップの絆を深めよう。
(五)企業市民として社会に貢献していこう。
 言うまでもなく、この度の公開は一つの通過点に過ぎない。当社はまだまだ発展途上国だ。あらゆる面で不備、不足だらけだ。それを備え満たしてゆくには、次のさらなる目標に向けて、あくなき挑戦をし続けなければならない。その意味で本日八月一日は心すべき新たなる創業の出発点だ。
 常々思うところであるが、城の石垣は大中小の石の組み合わせの妙で成り立つ。大中小の石は役割において軽重も格差もない。それぞれが互いに持ち場を死守し、支え合い助け合ってこそ堅固な城が立つ。
 会社の組織はこれと全く同じだ。それぞれが自分の果すべき役割をしっかりと認識し、一所を懸命にするところに自ずと組織の活力が生れる。これからさらに地域に密着し、深く根ざし、お客さまと直結して、感動と歓びを共有することが、私たちのふれあい業のあるべき姿だ。「健康づくり、幸福づくり、人づくり」を理念にプライドブランドのPB商品によるトータルヘルスケアーを一層、広く深く推しすすめて行こう。
 そしてもう一方企画部(名古屋、東京、大阪オフィス)の役割は新しい可能性と限りない創造性を追求することにある。ボーダレスの発想でワールドワイドの活動を通して、世界の人々と手をつなぎ、ふれあいの国際ネットワークを構築して行こう。今一度、ここで私たちは次のことを銘記しておこう。
 評価は業績(結果)がすべてであるということを、そして輝かしい未来と繁栄は絶ゆまない挑戦と革新の中からこそ生れることを。

平成九年八月一日