018: 勢いはスタートダッシュで決まる

2010.07.10

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 陸上の長・中・短距離の競技においては、例外なく選手はスタートダッシュに全精神を集中させる。それは、スタートダッシュがうまくきれるかどうかが、勝負のカギをにぎる最も重要なキーポイントになるからだ。スタートダッシュがうまくいくと、そのはずみで勢いがつき、勢いがさらに一層の勢いをつくり、どんどん加速されていく。
 勝負というものは、なまじっかの技能、技量より勢いで決まるものだ。反対に、ラストスパートで勝つことは非常に難しい。それは、終盤にさしかかると皆それぞれに、これで最期の頑張りと思うと必死になって、持ちうる余力のすべてを出しきってくるので、それをはるかに上まわる数倍の力がいるからだ。だからラストスパートは、おいそれと誰にでもできる芸当ではない。
 特にマラソン競技の流れを見て、つくづく思うことは、ほとんど優勝者は始めから終りまで、必ずと言っていいほど先頭集団に位置をキープしている。第ニ、第三集団から抜け出してトップをとるのは至難の技だ。薄ぺらな自己満足する程度のマイペースでは、勝利は到底おぼつくものではない。競技は自分独りではない。常に多数の相手がいるのだ。勝つためには、先頭集団のペースに対応できるだけのマイペースを持続する力をつくっておかなければならない。一口にマイペースと言つても、意識や力のレベルに相当の違いがある。
 さて、今年四月の新入社員の諸君も少しづつ仕事にも慣れてきた頃だと思うが、入社三ケ月がまさにスタートダッシュの期間と言える。今までの経験則から、この三ケ月間でほぼ将来が決まると言っても過言ではない。いや、私の場合は、スロースターター(自分で決めつけている)なので、そのうちに頭角を現わしますから期待して待っていて下さい、と言うような悠長にかまえている人は、この先、どんどんとおいてきぼりになることは必定だ。だから、この三ケ月は意義深い、最重要な黄金の時だ。
 とにかく、今は最大の武器である若さを活かして、ガムシャラでもいい、前へ前へ歩を進めることだ。この経験は、後になって間違いなくボディーブローとなって効いてくる。
 すべて勝負は勢いで決まる。勢いはスタートダッシュで決まる。

平成九年六月一日