015: 率先垂範こそ上司の心得
2010.05.25
※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。
いよいよ四月には七〇数名の新入社員を迎える。去年の新入社員は今年から二年生、二年生は三年生・・・・・というように一年ずつ在社年数が増えていくのであるが。
残念なことに、在社年数と仕事の腕前とは必ずしも正比例しないようだ。
前に、ある大工の統領からこんなことを聞いたことがある。「この仕事はねぇ。ただ長くやっとるだけではダメですわ。真面目はもちろんのことだが、いつもヤル気や研究心がないとね。技能技術はそのあとから、だまっていても自然についてくるもんだ。大体、腕を上げてくる子は、仕事中は私のやり方をどこからともなく盗み見し、仕事を終えると、どこか隅っこで隠れては廃材を相手にコツコツと練習をしとりますわ。ただ年数を長くやっとればうまくなるというもんじゃないんですわ。」
長い航海を続ける船にはきまってカキガラが付き、その分燃料は余分に食うし、おまけに減速されてしまう。このカキガラというやつはマンネリズムや陳腐な固定観念あるいは相も変わらず工夫のない同じことのくり返しと言ったようなものである。だから、その都度しっかりと取り除いておかないと、そのうちに行く先々で立ち往生してしまう。いつも自己点検をし、きれいに掃除を心がけておくとまた面白いように新しい発想やアイデアが湧いてきて、スムーズに前進を続けてゆくことができる。
個々の業績について日頃思うところであるが。おおよその目安で、三年生は一年生の五〇%増し、六年生は一〇〇%増し、ベテランの一〇年生は二〇〇%増しの仕事ができて当り前だ。ましてや所長や主任の役職者は言うまでもない。
さて営業マンの仕事はただ一つ、ひとえに売ることである。売って売ってまた売って売りまくることだ。すべて結果がものを言う。お客様とのコミュニケーションは、そのための手段の一つに過ぎない。売るために、常にあらゆる知識・技術・情報を貪欲に取得し、合せて自分を限りなく磨き高めてゆくことにある。まさに売るという業は総合的な人間力の業である。売ってこそ、使って頂いてこそ、はじめてお客様のお役に立てるのだ。そして多くを使って頂ければ頂くほどお客様の満足が大きく広がる。
断言しておこう。戦線の指揮官である所長、主任は所員を強力にひっぱってゆく機関車であり牽引車だ。その力は気力、知力、体力、統率力、勇気する力、挑戦する力、前進する力等々あらゆる人間力を言う。
再確認をしておこう。牽引車とは「他の誰よりも真っ先に、よし私がやってみよう」という率先垂範のことだ。
平成九年二月二十八日