012: ライオンはウサギさえ全力で獲る
2010.04.10
※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。
曲がったキュウリやナス、虫の食った白菜やキャベツ、葉っぱのついた大根やカブラ、糞のついた卵、シミのあるリンゴ等々、昔が懐かしい。それらには様々な個性があったし、ほんものの香りや味があった。そして何よりも美味しかった。現在、店頭に並んでいるのは色も形もサイズも均一化、画一化されてうす気味が悪いし、味もそっけもない。
生産や流通の仕組みが変わったのか、変えられたのか。それとも消費者の志向や嗜好が変わったからなのか。虫も敬遠して食べないものを、気の毒にも人間は食べているらしい。コストをかけ、虫をも殺す農薬をかけ、百害あって一利なしの着色をし、定規で計ったように形とサイズをそろえ、規格外は捨てられてしまうのか。この所業は無駄とか、もったいないをはるかに通り越して、もう悪業だ。
一方、世界中で毎日一万二千人の子供が飢えのため死亡しており、栄養不良やたん白質カロリー不足に苦しめられているのが二億人に上る。そして八億人が飢餓に見舞われていると世界食料計画(WFP)は伝えている。何かおかしい、どこか間違っている。
さてよくあることだが、過日居酒屋にて、となりの席の会話である。
「権限がないから」「小さな仕事ばかりでやりがいがない」「仕事が単調でつまらん」「○○が悪いので」あげくの果ては「こんな会社ではおもしろくない、どこかいいところないかなぁ」と。
よくもまあ、次から次へと不平不満愚痴、悪口雑言がついて出てくるものだ。あまりにも騒がしく耳障りで、となりを見やれば、なるほど情けない面々。面が悪すぎる。不快極まりなく、こちらの酒までまずくなりそうで、そそくさと我々は店をあとにした。
酒はおもしろく、楽しく飲むもの。互いに生命や夢をふくらませるような、人生の滋養になるような、いい酒でありたいものだ。そうでないと人はもちろん酒に失礼だ。こういう人はどこに就職しようと転職しようと永久に満足することはないであろう。変えなくてはならないのは勤め先ではなくて、自分の心の姿勢だ。ひとりよがりで、甘ったれの依存心からでる不平不満愚痴はきまって人のせいや社会のせいにする。つまる、つまらんはその人の心の姿勢が決めることだ。
ライオンはウサギを獲るとき、全力を傾ける。間違ってもウサギじゃぁ小さ過ぎてやる気がしないとは決して言わないのだ。大体、「仕事がつまらん・・・・・」と言う人はむずかしい仕事を与えられると、必ず今度は自分にはできないともっともらしいへ理屈をつけて尻ごみをする。
ああ、せっかくの人生なのに。あまりにも哀れでもったいない。こういう人は宙ぶらりんの中途半端だから、いっそのこと人生のどん底にでもつき落としてやった方が、早く目がさめていいかもしれない。
平成八年十一月三十日