004: できないと思ったらできない

2009.12.10

著書「心のしずく」より

※著書「心のしずく」より ~アーカイブ100回連載シリーズ~
※この記事は、平成八年~平成十六年にかけて執筆されたものです。

 春は出発に最も適した季節だ。木々の緑がきらめきと輝きを増してまばゆいばかりだ。生きとし生けるすべての生命がふくらみ、燃える季節にその躍動が美しい。
 今年も大勢の新入社員が入ってきた。毎年新入社員にはきまり文句がある。「希望と不安を抱いて・・・」と。「希望」は大歓迎だが、その次の「不安」がいただけない。この場合の「不安」とは何をもって言うのか。具体的に何か分かって言っているのか。それとも周りもそういうから、ただ何となく同調して言っているのか。察するに、この先結果がどうなるのか分からないから。あるいはデキルのかデイナイのか。そのための努力を続ける自信と勇気がないからなのか。
 冗談言っちゃいかん。初めからそうたやすく出来てたまるか。そんなこと言い出したら三〇年選手の小生なんかはズート不安だらけだよ。晴れの出発に臨んで、なんでわざわざ否定的、消極的、悲観的なマイナス言葉を使わなければならんのか。この先悪い、暗い人生を目ざしているのかとでも言いたい。
 結果がどうなるのかはやってみないと分からない。だから悔いのないよう全力を尽くすのだ。全力を尽くすと、たとえ結果がうまくいかなくても、実に清々しいものだ。ありがたいことに、その時にほんものの身についた教訓を得ることができるからだ。
 デキルかデキナイかやる前から考えることも無用なことだ。デキナイと少しでも思ったらデキナイのだ。デキルものとかかってやることだ。そうすると計画を綿密にたてるので結果的にデキルようになってくるのだ。豊かな行動力とは薄っぺらな頭の作業ではない。つまらぬマイナス思考を捨て、徹頭徹尾プラス思考で、とことんまでやり抜く全身全霊の姿勢の中から生まれるものだ。たとえ天地がひっくり返ろうが「私はできる」の精神を忘れるな。
 それから、新入社員を受け入れる先輩方にも言っておこう。信頼される先輩上司とは、一.仕事ができる。二.信念とビジョンをもっている。三.細かいこと、きついことを言うが親身になってくれる。四.次から次へとより高い仕事をくれる。五.部下には間違ってもグチや泣きごとを言わない。
 磨く人、磨かれる人、鍛える人、鍛えられる人、いずれにせよこれだけは心底から断言しておこう。「率直に、プラス思考で常に目標をもちつづける」そういう人でなければ何事も成就はおぼつかない。ただの夢幻に終わる。
 さあ、さわやかな春風にのって、清々しく心軽やか行こう。

平成八年三月三十一日