思うままに No.228

2014.11.30

エッセー「思うままに」

   

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 <気が利き過ぎて間が抜ける>という言葉がある。

 注意が行き届いているようでかえって落度があるという意味に使われる。よかれと思って気を配るのだが、相手の欲することと、欲せざることをよく弁えずに浅慮からの行為だ。相手の満足より自己満足からくる行為とも受け取られかねない。

 また<過ぎたるは及ばざるが如し>で気が利かないのも困ったものだが、過ぎるのもそれ以上に閉口する。人のためにする行為でもっとも大事なことは相手がいま一番欲していることが何かをよく考えてから行わなければならない。その上でその人の気色をよく観てタイミングを見計ることだ。それが分からないとき、迷ったりするときはいっそのこと何を望んでいるのかを率直に尋ねてみるのも一法だ。

 過日惜しまれて他界された男の中の男、高倉健さんが常々口にしていたのは「人を想うことが大切だ。人が人を想うことほど人として美しいものはない」と。この想うことが正しく人には気配りをせよという意味だ。

 翻って私たちの仕事はふれあい業だ。その肝は心と心を通い合わせる気配り業とも言える。相手にとって今日は気分のいい一日だった。心温かい心豊かな一時だったと感じていただけるように努めて意を注ぐことだ。

 かゆいところに手が届くように、そのかゆいところは何処か、自分だったらどうしてもらいたいのか自問してみるとその答えは自ずと出る。常にそんな想いで接客に励めばやがて気配り達人になっていく。人にも自分にとっても気分がいいし自然にファンもできる。気配りはまた人間力を醸成したり優れて人間通にもなっていく。

 さて日常生活をおくる上で様々なことを思う。

・ショッピングするとき、店員の執拗なまでにまとわりつく邪魔くささ。先ずは自分の目で確かめ手にとるゆったりとした時間が欲しい。
・車に積み込む荷物を重いものと軽いものをごちゃまぜにする。後で荷下しのときのことを配慮もせずに、軽いものは奥へ、重いものは手前がいい。
・ゴミにしかならない過剰包装。
・自販機の無機質なお礼の音声。
・カーナビのディーラーからのくどくて耳障りな告知。
・公共の乗り物などでの要らぬお世話のやかましいアナウンス。
・送られてくる封筒でのり付けされ、その上にセロテープで封をする。さらにバカ丁寧にも封筒の表側まで巻きつけること。

 等々数えあげれば枚挙にいとまがないが、いずれも過ぎて閉口する。確かに気配りはむずかしいが、心してやるのと否かではその効果に差が出る。とりわけさりげない気配りは一時に終わらず永時にわたって心に残る。