思うままに No.226
2014.09.30
※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~
この世に生を受け限られた命を全うするまで、長い人生には幾多の困難に出遭う。そこには上手くいくことよりも失敗することから得る学びが多い。そのなかで何と言っても大事なことは何だろうがかんだろうが、負けずにきちんと前に向いて生き抜く力だ。そうして誰のものでもない自分の人生を他と比べることではなくて自分なりに自分の人生を全うしていくことだ。あくまでも人生は自前その主人公は自分なのだ。
さて諸々の教育で最重要な目的は生き抜く力をつけることに尽きる。先ず親の、子に対する身近な教育にある。その上で教えていかなければならないのが忍耐力だ。これは生まれつきの資質ではない。実生活を通して城の石垣のように根気よく積み重ねられてつくられる。
とりわけ子供のうちに鍛え学ばせることが肝要だ。忍耐することを予防接種のワクチンのようにその都度心身に植え込んでおくことだ。これが後の大人になったときに必ず効いてくる。<三つ子の魂百まで>と言われるように。
近頃、親は子供を叱らないと耳にする。全くもって無責任なことだ。親は子供の友達ではない。是は是、非は非と身をもって示さなければならない。甘やかして怖いものなしで育てられればどんな大人になっていくかは明々白々だ。社会の忌まわしい事件事故の原因は共通してここにあるように思えてならない。世には体は立派な大人だが、心は貧弱な子供という輩も少なくない。ただ子供は無邪気であるが、大人にはそれは当てはまらない。
生きていくことは並大抵なことではない、諸々のことは現実、自分の思い通りにはいかないものだ。だからこそそういう場面にあったときの心の処し方をよく教え込んでおかないと、とんでもないことをしでかしたり辛抱のできない独り善がりの人間をつくってしまう。社会にとっても大きな損失だ。とにもかくにも時すでに遅しにならないよう小さいうちから忍耐する力を身につけさせなければならない。
忍耐はあきらめることでも逃げることでもない。いまに見ておれという秘めたる思いをもって自分に対する闘う力をつけることだ。じっと辛抱して忍耐の根を深く下してくれるのは試練だ。辛苦のなかにあろうともこれしきのことで負けてたまるかと自分に言い聞かせることから忍耐する力がつく。寒冷のときを耐え忍んでやがて春には芽を出し花咲かせる草木のように。
忍耐とは、ただ耐え忍ぶことではない。いかなる状況下にあっても希望を抱き前に向かっていく意志の働きであり、生き抜く力そのものだ。またそれは人生にとって大きな自己資本となる。