思うままに No.208
2013.04.01
※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~
過日、中京ウェイと新中期経営計画の事業説明会を催した。その大テーマは「成長戦略の起動と『トータルライフケアー』による事業領域の拡大」と銘を打つ。要は積極的に攻めの経営に徹し、持続的な成長を図っていこうという主旨だ。この計画書には考え方、目指す方向を明確にし、新組織による責務と役割を示し、どのように活動していくべきかが分かり易く説明されたものだ。
さて本日より新年度がスタートする。その際には誰しも初々しい気持ちをもつものであるが、それと同時にその先の良いゴールインをしたときの姿を鮮明にイメージをして臨みたいものだ。先のロンドンオリンピックで48年ぶりに快挙を成し得たボクシングの金メダリスト村田諒太さんは毎日練習日誌をつけて、その最後の一行には必ず「金メダルをとりました、有難うございました」と未来を過去形にして家の冷蔵庫に貼っていたそうだ。そうして自他とも認めるひ弱な消極的な自分を積極、プラス思考に変えようと実践し続けた。
また、「人よりたった1パーセント上回る101パーセントの努力練習が小心者の僕に自信を植えつけた。易きに妥協せず他人ではなく自分との戦いに勝ったことが金メダルにつながった」と述懐している。彼の目標設定の仕方は一年、半年、今月、今週、今日と目標を逆算し、順番に書き連ねていくことによって、日々のモチベーションを高めていった。人間はしょせん弱いもの、楽な方へと易きに流されるからこそ過酷な練習メニューを自らに課し自己コントロールをはかったのだ。
あのマッキンレーで帰らぬ人となった偉大な冒険家植村直己さんとその消息を断つほんの1ヶ月前であっただろうか、何年か振りに成田空港でバッタリ出会いお茶を一緒させて頂いたときの話がある。「到達の日と地点を決めて、先ずやり遂げたときの自分の姿をイメージし、そこから明後日、明日、今日と行動日程を逆算し、目標を細切れにして向かった」と。静かな口調ではあるが熱い思いを語ってくれたお顔が今なお鮮明に残る。
ひょっとしたら川と海を回遊するサケも何マイルも空を飛ぶ渡り鳥も初めに目標を設定して逆算する術をもっているのかも知れない。その意味で目標設定達成の仕方は思考ひとつで結果に大差がつく。
前述の村田さんが恩師から常に言われ続けたことがある。
「負けて泣くことはないよ。お前は泣くほど練習してないじゃないか。」
「負けて痛みを知り、勝って101パーセントの努力をしなければならない責任を負え」と。
ことに向かうにあるべき姿をイメージして逆算の思考と弛まない努力と練習、これがワンセットになったときに勝利の女神が微笑んでくれる。