思うままに No.180

2010.12.01

エッセー「思うままに」

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 顧客とは企業を選び人を選ぶ人たちだ。我々は顧客に選ばれる立場であり、主導権はすべて顧客の掌中にある。顧客は店販、訪販、通販の業態を問わず、様々な広告媒体から商品・情報・サービスを吟味して購買する賢い手強い人たちだ。さらに急速に進化する情報化社会は遍く、詳細にスピーディーに顧客のための豊富な知識・情報が居ながらにして得られる時代だ。
 それに適切に対応していくためには、我々はプロとして日頃より情報収集や勉強を怠ってはならないし、またより質の高い商品づくり、サービスの提供をしていかなければ顧客の要望や満足に応えられない。
 事実、顧客は購買するとき、相当数の店や人と接する機会を多く持つ。我々はあくまでもその中から選ばれる、ほんの一社、一人に過ぎないし、また競合相手は同業者とは限らない。例えば焼肉店は他の同業の焼肉店だけでなく、牛丼、ハンバーガー、うどん屋、ラーメン店、喫茶店、コンビニ店、スーパー、食料品店、ホームセンター等々各業種にわたって数々の業者と競合する。
 顧客にとって購買する商品は店販、訪販、通販その他の業種業態と競合するあまたの販売者から有利に選ぶことができる。一方、我々は、いち消費生活者としての立場になれば、あらゆる販売業者からためになる情報・知識を得てより良い購買をしたいと望む顧客でもある。その意味で我々は置き薬という業態から狭いクローズドマーケットを相手にしているという認識は間違いだ。なぜなら顧客はどこで買おうと自由がゆえに、広くオープンマーケットから現実に購買しているからだ。
 さて顧客の「顧」という字は「かえりみる」という意味がある。今日一日、接客のとき、お客さまの反応に対して自分の態度・知識はどうであったか、満足して頂けただろうか、それとも不評を買ってしまったのだろうか、自らをとくと反省せよという意味だ。
 もう一つには「愛しむ」という意味もある。お客さまを自分の家族・友人のように大切に思う気持ちだ。お客さまのちょっとした仕草にも気にかける細やかな心配りを意味する。我々が、追い求め続けるのは、自ら身を整え親愛の情を込めて一人でも多くの顧客をつくることにある。
 相思相愛というように、売り手と買い手の双方がお互いに慕いおもう、ほのぼのとした温かい人間関係が築ければこれにまさる強い絆はない。その上で的確に、タイムリーに価値ある情報を加えれば、信頼度と親密度は深まる。ここに顧客価値創造の原点がある。そして同時に企業価値創造に自ずとつながっていくのだ。