思うままに No.175
2010.07.01
※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~
ビジネスの世界や職場ほど人の正体を現わすものはない。その人のことをほんとうに知ろうとしたら、仕事を一緒にしてみることだ。とりわけ利害関係が絡むと正体が炙り出し紙のように如実に写し出される。飲み会やゴルフ、麻雀などの遊びのつきあいからではとても見えないものが実によく分かって、あらためて見直したりガッカリしたりもする。
また職場は人となりや見識がこすり合う真剣勝負の場であると同時に、自分を磨き高めてくれる格好の鍛錬の場でもある。ここから得る最大のものは人品、人間力という正味の財産だ。この財産はいつまで経っても減価しない。それどころか人間の元本とも言えるこの財産はさらに幾多の学習、経験が加わって、ますますその価値を高め増やしてくれる。金品などとても及ぶところではない。
職場は無論、生活の糧を求める場に違いはないが、一方、仕事を通じて人の役に立つことで得る、やりがいとも言うべき人生の糧を求めていくものだ。この糧こそ何にも代え難い喜びではないか。生き生きとした職場はお互いに啓発し合い、個々のやりがいが満ちときに創出されていく。またそこには将来、自分はかくありたいという目指す像を描くことが必要だ。そうして初めて誰しももっと大きく成長したいという意思をもつことができる。
意思なきところに実践はなく、実践なきところに希望の実現はあり得ない。人は希望の動物だ。希望をもつからこそ忍耐し、自らを鼓舞していく。向うその様は実現したときの姿よりもはるかに美しく尊い。観る人を感動・感激させてくれる。
強い希望をもつ者にはいちいち恨んだり嘆いたり愚痴をこぼしているヒマなどない。実現に向って全力を傾注するが故に、つまらぬエネルギーは浪費としか考えない。目は常に先に向いているのだ。目前の様々な課題を整理整頓清掃し、優先順位をつけて一点づつ突破していく。
いま自分にとって、何が最重要なのかきちっと分別して断行する。万事のこと自分の思い通りには運ばない。ときには全くの想定外のことも起きる。ここが悔しい難しいところだ。
だからこそ、やりがいもあるし面白いと考えたほうがいい。ただことを為すには心の余裕をもたなければならない。その心がことを喜びや楽しみに変えてくれる。余裕は大器によらなくても小器でもつくれる。あたふたするゾウよりも裕然とするアリのほうが賢明だ。
要は心のもち方、次第だ。