思うままに No.201

2012.08.31

エッセー「思うままに」

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 数々の名場面に熱い感動のドラマを繰り広げてくれたロンドンオリンピックが閉会した。何と言ってもスポーツは人種・宗教・政治・文化をこえて、一定のルールに従って公正に競われるところに大きな意義がある。
 競技の一瞬一瞬に全神経全エネルギーを傾注し、さらに選手の全人生も凝縮されるその様に誰が心打たれずにいられようか。限りない可能性に力をふりしぼってチャレンジする心身の力強さは美し過ぎるぐらい美しい。
 この度男子柔道81kg級に出場した我等が中井貴裕君は惜しくともメダルを逃したものの見事に5位に入賞を果たした。このクラスは世界では強豪揃いの最も層が厚く難しいと言われる。当人としては残念無念の境地であろうが大健闘したと大いに誉めたい。全試合とも常に前へ前へと向かう姿勢には心服した。
 まだ若い。次の機会がある。この貴重な経験はこの先必ず生きる。負け惜しみではないが、物事は簡単に手に入れるより、苦労に苦労を重ねての方が長い人生においてはうんと価値は高い。一生懸命の負けは負けとは言わない。ほんとうの負けは怠惰の負けを言う。負けて躓いて転んで人は強くなっていく。
 彼のこと、これを教訓に次なる戦いに向けて持ち前の不撓不屈の精神でいま厳しくも過酷なけいこを始めているに違いない。これからもまた応援できる我々は、彼から多くを学べることに感謝したい。
 今回も心に残る選手たちのコメントに出会えた。
女子レスリングの小原日登美さん
 「乗りこえた先にしか見えないものがある」「夢は叶う、しかし選ばれた人しか」
48年ぶりの金メダリスト男子ボクシングミドル級の村田諒太さん
 「これで僕の価値が決まるわけではない。これからが僕の人生の価値を決める」
 「努力したから報われるとは限らない。しかし努力しなければ報われない」
 「思いを先に書く、実現したときのことを思って」
 いずれのコメントも深くて重い、ずっしりと伝わってくる。我々企業活動も日々戦いだ。スタッフ・監督・コーチ・選手各々の役割をもってチームを構成し戦いに挑む。戦いは一時一時で終わるが果てしなく続く。その結果を価値あるものにするには至極当然のことながら普段の思いと精進があってこそのぞめる。
 勝負の一時のためには燃えたぎる情熱と膨大な時間とエネルギーが永時にわたって費やされるものだと改めて痛感する。