思うままに No.196

2012.04.01

エッセー「思うままに」

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 ようやく厳しかった長い冬ともお別れだ。このところ新たな出発に向けて木々がニョキニョキと芽をのぞかせ新緑の準備に余念がない。いつも不思議に思うがその新芽は人間の赤ちゃんのように赤い。
 さて本日より新年度が始まるが、いつになく格別に思いが深い。社の将来を見すえるとき本年度は正念場であり、もっとも重要な年度になると考えている。社を刷新すべく、気分を一新し、目的目標を実現していくためには先ず力強いスタートダッシュが必要だ。ダッシュの勢いがさらに勢いをつくり周りを巻き込んで怒とうのごとく奔流になる。「花も嵐も踏みこえて行くが男の生きる道」いま戦場におもむく武者震いにも似た心境だ。
 人間は何としても実現させたいことがあると、時と所を忘れて一心不乱のとてつもない力を発揮する。いつだったか、誰だったか教えてもらった魔法の言葉「あおいくま」をふと思い出す。「あ」あせらず、「お」おごらず、「い」いばらず、「く」くさらず、「ま」まけず、「あおいくま」で行かなければと。
 過日、我が母校亀崎中学校の卒業式に出席する機会を得た。思うにいかなる賞賛をもってしてもしきれない素晴らしい式であった。会場の体育館は本校の全生徒、先生、父兄、来賓で満席。ピーンと張りつめた心地よい緊張感、厳粛で格調高く親愛の情に満ち溢れる。次第通り式は滞りなく進行していく。
 圧巻は二年生による<送別の辞>を受けての<答辞>は卒業生を代表して女子生徒。今日までお世話になった先生、父兄、地域の方、そして同窓の仲間に向けての別れの言葉、胸を打つ感謝の言葉、残る後輩への期待、新しい旅立ちに向けての自分たちの思いを切々と朗読する。
 純粋にして率直、心底からこみ上げてくる深い思いに感極まり、時おり涙にて声をつまらせる。会場いっぱい涙また涙が伝播する。映画のワンシーンのようであるが、いかなる名女優でも、これだけ聴衆の心を打つことはできないであろう。感動、感激、感涙そして感謝の嵐がうず巻く。この先、幾多の困難に出会うことであろうが、167名の諸君が志を高くもって進んで行って欲しいと心より願いたい。
 因みに彼らを立派に育んできた本校の校訓は<公正・自律・敬愛>である。この校訓、当社の社訓にしてもいいように思うぐらいに素晴らしいものだ。