思うままに No.188

2011.07.29

エッセー「思うままに」

※エッセー「思うままに」より ~毎月更新~

 ITの通信情報技術の進化発展は急速なグローバル化を促進し、どこにいても瞬時に身近に世界の出来事を知ることができるようになった。これからも止まることのないこの技術革新はますます人類社会に限りない恩恵と利便を享受させてくれることであろう。
 その一方で出会い系サイトなどの痛ましい事件が日常茶飯事のように起きる。デジタル社会の利便と簡易にひそむ落とし穴に危うさと無気味さを懸念する。デジタル化が進むほど人間社会にはアナログがいかに大切であるかを改めて思う。デジタルはあくまでも道具に過ぎない。それを使うのは人間の心であることを忘れてはならない。
 この頃、素晴らしい嬉しい一報を飛騨金山営業所より受けた。
 所員の山下志生さんのことである。
 7月12日、独り暮らし63歳のお客様宅にいつものように訪問したところ、普段は玄関ドアが開いているのだが、今日はカギがかかっていたのでてっきりお留守かと思い帰ろうとした。ところが、ドア越しにTVの音がかすかに聞こえてくる。何となく様子がおかしいと感じ声をかけたところ「助けてくれ」と悲痛な声がもれてくる。すわ一大事と直ぐさま窓ガラスを打ち破り部屋に入る。倒れているご本人に先ず水を補給し救急車の手配をし警察に対応する。本人は意識はあるものの4日間も動くこともできず瀕死の状態。このまま発見されなかったら危なかったという。病院に搬送され危機一髪、一命を取り留めた。その後大事に至ることなく徐々に回復とのこと。ご本人はもちろんご家族、警察署からも本当に有り難うの連絡を頂く。
 この度のこと、日頃のコミュニケーションがあったからこそ、この素晴らしい業ができ得たのだ。と同時にお客様宅へ訪問する際に、つねに全神経を集中していたからこそ、ドアー越しからのか細い声を聞き逃がさなかったのだ。
 この間の東北大震災の被災者の方々から多くの感謝の言葉を頂いたことと同じようにデジタルではマネのできないアナログのふれあい業、配置業だからこそでき得るのだ。我々はもの売りを超えた様々なお役立ちできる位置にある。この業、誇れる仕事だと改めて思う。
 山下さんには心から敬意を表し感謝をこめてお礼を言いたい。