ANITRAディナバンドゥ研修センターでは、付属する孤児のための小学校(男女別)において職業訓練が行われていた。実際に目にすることができたのは、女子児童がテーブルクロスや枕カバーなどに刺繍を行っている教室だった。
このANITRAでは、さまざまな組合活動を通して、下層カーストの暮らし向上のための働きかけをしていた。農民組合、伝統産婆組合、農業労働者福祉協会、ニューマックス協同組合などの活動の支援から、ダリットの貧困、財産が無い状況からの脱却、行政の支援のみに頼ることなく、自助・相互扶助により、住民の自立のための働きかけをしている。下層カーストの身分のままでは、上層カーストの農園で日雇い人夫として適正賃金も支払われないまま泣き寝入りすることが多くあるため、住民自立のために小規模金融などを融資し、換金作物の栽培や小規模商店の経営等ノウハウを伝えていた。
指定カーストでありANITRA活動集落の女性グループのリーダー宅でのホームステイ。ARPでのホームステイ同様に暖かく迎えていただいた。テレビもあり、私たち日本の生活と変わらない感じがした。カースト下層と言われつつも、(失礼な言い方かもしれないが)生活のレベルは高いと感じた。ただ物質的に豊かになると、家族同士の会話は少なくなるようだ。
また近くの集落には最も貧しいところがあり、電線は家の上に通っているが街灯しかなく各戸に電気は引かれていなかった。集落の男たちは、上層カーストの畑に日雇いで働く。同じ下層カーストと一口に言っても、その中でも格差がはっきりと存在していた。
ディナバンドゥのプライマリヘルスセンター訪問。町、村レベルの基本保険センター。24時間対応している医療施設。主に、ウィルス性の疾患、子供・妊産婦の医療に力を入れている。中央政府と各州政府からの補助金により運営され、治療費は基本的に無料で各州の保険制度が運用されている。医療の現場では、日本でも言われるように人手不足が深刻な問題となっていた。医療行為に対してはカーストによる差別がほとんど無く、高収入の得られる都会に医師が集中してしまう現実があった。
ARP、ANITRAで共通した認識があった。それは病気の治療は大事なことであるが、もっと大事で人々のために有効なことは、病気にならないための予防である、ということ。まさに"セルフメディケーション・プライマリケアの実践"が日本と遠くはなれたインドの地においても人々の健康を守るためには必要なのだと実感した。
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