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CSR(社会的責任)

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【商品企画課】 鷹巣孝一
「貧しい者の友の村」ディーナバンドゥー研修所で目にした現実
村に息づく産業や伝統療法の見学を通して、
リアルな庶民の暮らしを身近に体感した2日間。
■ 4日目/ホームステイ先およびARP研修所との別れ

昼 ホームステイの感想を述べる会

ARP研修センターに戻り、全員で集まってホームステイの感想を述べた。トイレや風呂など、生活様式の違いに驚いたという人が多くいた。私は以下の2点述べた。 ひとつは、少年たちが機械に強くて驚いたこと。彼らがインドを大きく発展させるだろうと感じた。
もうひとつは、助けを求められたこと。デバネーサンの兄、ジョージが言った「助けを必要としている。弟を支援してくれ」という言葉が頭に強く残っていた。「助けてくれ」とは、何を期待しているのだろうか。お金をくれという意味なのだろうか。しかしお金だけ渡しても、彼らは刹那の楽を手にするだけで、根本的な解決にはならない。いったい何を求められていたのだろう。そこで私はとりあえずこう結論付けた。

「私が何をすべきかは置いておいて、とにかく『彼らが助けを求めている』という事実だけ分かった」。

世界には、「未開の地に立ち入って文明を教えるのは先進国のエゴだ」という考え方もある。その土地にはその土地のルールがある。それを安易に壊してはいけないという考えだ。しかし、彼は違った。明らかに助けを、先進国の働きかけを求めている。だから私に何かできるのなら、喜んで手を差し伸べようと思う。


ARPとの別れ
ARP研修センターを離れるときが来た。お別れパーティで、結婚式で使うという布を貰い、子供たちに別れを告げた。
次に向かうのは、かなり離れたところにある「ディーナバンドゥーDeenabandu研修所」というところ。今度はどんなところなのか、楽しみだ。

夕方 Deenabandu研修所に到着


2時間くらいバスに乗り、というところに着いた。これから数日間、ここのお世話になる。
各部屋に荷物を置いた後、歓迎会が開かれた。ここでも「民衆劇」を見せてもらった。ディーナバンドゥーの民衆劇は、ARPのそれより凝っていた。役柄に合わせて衣装を着たり、小道具を使ったりしていた。身近な問題ばかりではなく、地球温暖化の劇もあった。金持ちに扮した男性が、木に扮した女性たちを切り倒していくというもの。少し、芸術的でさえあった。 ARP研修センターは子供たちを教えていたのに対し、ディーナバンドゥー研修所は大人や、少し大きい少女たちに職業訓練をしている。教えているのは、医師の夫婦だ。ここにはお金も、知識もたくさんある。貧困は感じられない。やはり、土地によって差があるようだ。


■5日目/ディーナバンドゥ研修所での一日

ヨガ教室
朝早くにおきて、ヨガを体験した。ぼんやりとして、とても気持ちが良かったためあまり覚えていないが、主に呼吸法だった。呼吸を整えるだけで、これほど気持ちよくなれるとは、ヒトのからだは何とも簡単だ。

サトウキビから砂糖を作る
サトウキビ工場に見学に行った。土地の産業なのだろう。サトウキビを機械で搾り、その汁を煮て、固めて、丸めて、砂糖を作っていた。商品企画部員として、想像通りの製法だったことにちょっとがっかりしつつも、勉強になった。

蛇を狩る人々の村
次に、蛇を狩って生計を立てている村に行った。彼らは藪に入って蛇をとり、その皮を売ったり、蛇を使って薬を作って売ったりしている。薬の作り方を聞いたが、秘密らしい。この日の狩りでは、残念ながらお目当ての毒蛇は獲れなかったが、いろんな爬虫類を見せてもらった。
ついでに、彼らの生活を覗かせてもらった。4畳半ほどしかない狭い家に入ってみると、なんとそこにはテレビがあった。その隣の家にもまたテレビがあった。同じ村なんだからそんな高そうな物を一家に一台買わなくても、みんなで集まってみればいいのにと思った。  

村に伝わる伝統療法も教えてもらった。胃腸が悪いときは、手をあげて、身体を横から叩いたりしてマッサージをする。これで良くなるという。

なんと非科学的な、と正直あきれた。しかし、日本人チームのひとりであるお医者さんが「調子が悪い」と言っていたのでやってもらい、「良くなった」といったので、あながちバカに出来ないな、と感心した。
よく考えれば、効果があるから伝えられてきたのだろう。だから、こういう医療も応用していけば、日本の臨床ももっと良くなるかもしれない。



二度目のホームステイへ

午後の勉強のあと、ホームステイへ行くこととなった。ホームステイ先は、Mr. SubramaniスプラマニというGovernment Stuffの人の家だ。
どんな立場の職なのかは分からないが、Agricultureといっていたから農業関係なのだろう。あと、とてもお金がありそうな家だったため、偉い職の人であることは間違いなさそうだ。
彼の息子たちは非常に優秀で、長男は29歳にしてまだ学生をしているらしい。博士課程か何かだろうか。また、たまたま訪れていた甥も、非常に賢かった。なんと、同僚が持っていたカメラをみて、その値段を当てたのだ。私たちは驚愕して、得意気に笑うその甥を見た。彼は、どう見てもまだ20代の青年だった。インドの人々のITの知識は、私たち日本人よりも上かもしれない。


■6日目/スプラマニ氏の住む村での一日

「JAPAN! JAPAN!」と興奮する子供たちに囲まれながら、私たちはこの村での一日を過ごした。カラフルな家がたくさんあり、特に貧しさは感じられない。
ここはダリット(ヒンドゥー教から逃れた人)の村ではなく、ヒンドゥー教の村のようだ。ヒンドゥー教の寺院がある。また、スプラマニ氏の家では、裁縫も教えていた。職業訓練だろう。

さらに道を歩いていたら、魚の行商に出会った。その行商の周りを、奥さんたちが囲んでいた。そして、奥さん達からひたすら「値切り交渉」の嵐が・・・。
もの凄い気迫だった。まるでケンカしているかのような。私の地元では、まず見られない光景だった。

街の真ん中には、小さいが非常に良く目立つ寺院があった。左は、特別にその中を見せてもらったときの写真。彼らの崇拝するヒンドゥーの神の絵が飾ってあった。今まで、「ヒンドゥー教のカーストが差別の悪玉」かのような話ばかり聞いてきたため、悪いイメージばかりがつきまとう。しかし、ヒンドゥーを信じる人々にとってはかけがえのないものなのだ。いけないのは、カーストという制度だけなのだ。

今回の旅で、非常に重要となる貼り紙を見つけた。これは、村人たちに「○○するのはいけないことですよ」ということを教えているイラストだ。
他宗教に怒りを覚えず、認めること。女児にいたずらしてはいけない、いじめてはいけない。女児を殺してはならない。妻を殴ってはいけない。強姦してはいけない、など。村人たちは、昔からの風習で「善悪」の考え方が偏っている。それを直そうという運動だ。特に女性への差別が多いのだろう。半分は女性と男性の力関係に関するものだ。

どこの国でも女性の立場が弱い時代があったが、民主化が進むにつれて「平等」になってくるものだ。インドも現在、その過程にある。こういった運動が進めば、いずれは女性も楽しく暮らせる国ができるだろう。ぜひとも応援したい。

次に訪れたのは、米のもみがらを取り去る工場。だだっぴろい敷地にコンクリートの建物があり、その中には重々しい機械があった。おそらく日本と同じと思われる風景だったが、働く人々の顔は険しかった。工場は立派だが、そこに働く賃金は安いのかもしれない。

工場の人たちが、工場近くに生っているココナッツを取って、カットし、飲ませてくれた。飲んでびっくり。甘いかと思っていたのに、ほとんど甘みがない。まるで、喫茶店でジュースを飲みきったあと、残った氷が溶けてできあがった薄いジュースのようで、お世辞にも美味しいとはいえなかった。
このココナッツを、インドの農村の人たちはよく飲んでいる。おいしいかどうかはさておき、暑い地域では水分補給になるし、おそらく身体を冷やす効果とかがあるのだろう。

どこに行っても、大抵、子供たちに囲まれる。たぶん、ひと昔前の日本と同じで、「ガイジン」は珍しいのだろう。私も子供の頃、外国人と話したときは嬉しかったし、外国人と握手をした友人なんかは「オレ!この手は洗わねえ!」とかいって喜んでいた。その経験があったため、何も不思議なことはなかったが、こうも喜ばれると自分がスターかなにかになったように勘違いしそうだ。

夜、子供たちが家に押しかけてきて、ノートの切れ端を片手に「サイン!サイン!」とせがまれた。私は喜んでこれに応じた。しかし、日本と同じで、横入りしようとする子供や、他の小さい子を押しのけてくる子、ただじっと自分の番が来るのを待っている子、いろんな子がいた。小さい子を突き飛ばして割り込んできた子にはさすがに私も怒って、「いけないことをしたから、君は後だ」と言って、最後に回した。できるだけ全員に書いてあげたかったが、次男ラジェシュクマルたち大人が「もう終わりだ!食事の時間だ!」と言って子供たちを追い返してしまった。スケジュールも大事だが、いい子にして順番を待っていた子がちょっと可哀想だった。

私と同行していた社員も、少し離れたベンチでサインをせがまれていたが「ちゃんと順番に並びなさい!女の子が先だよ!」と、子供たちを上手に躾けているようだった。小さい子に英語は通じないので、言うことを聞かない子もいたようだが、立派な大人に成長してほしいという社員の気持ちに、私は胸を打たれた。
大人として、私もいずれは親という「教育者」になる。そのとき、子供のことを思えば、厳しく躾けることは必要不可欠だ。私も彼のように、今からしっかり心がけていかなければ。

夜、食事をした後、スプラマニ氏の家の中に入れてくれた。(それまでは、離れにあるゲストルームで過ごしていた)家の中はカラフルで整っており、テレビがあった。そのテレビを見て、私と同僚はびっくり!なんと、日本のアニメが放送されていた。日本の「オタク文化」は、世界に誇るものがあるというが、こんなところでもその文化が見られるとは驚いた。
スプラマニの家は名家らしく、耳の聞こえない次男を除いて、子供たちはみんな大学まで行っている。そして、インドで学の高い人は日本の学生に負けないくらい知識を持っている。やはり、インドは末恐ろしい。このまま発展すれば、人口でも、技術でも、日本が太刀打ちできないほど進んだ国になっていくだろう。

ARP研修センターのお別れパーティー。子供たちの笑顔が忘れられない


サトウキビ工場で砂糖づくりを見学。サトウキビを機械で搾り、その汁を煮固め、丸めて砂糖にする



胃腸が悪いときに行うSirigumi村の伝統療法を子供に施している様子



2度目のホームステイ先のスプラマニ一家



職業訓練のひとつとして裁縫を習う女性たち



魚の行商風景。行商の周りを囲む女性たちの気迫の値切り交渉が印象的



昔ながらの古い習慣や性別などによる差別の改善を促す啓蒙ポスター



米のもみすり工場で両親が働く間、子供は工場の片隅で寝かされていたりする



インドの農村の人たちにとってココナッツは、水分補給の日常的な飲みもの



「サイン!サイン!」と押しかけてくる無邪気な子供たちは笑みは万国共通





   
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