【8月11日】
スラム二日目、主都コッテ市アルノーダヤマーワタ地域(昨日と同じく住宅計画を大臣から勝ち取つたばかりの地域)に赴く。
住宅省のプログラムである住宅計画事業の始まりとして、住宅省職員、土地埋め立て公社および地域住民代表による地域調査に同行。野球場ほどの場所に600戸ぐらい堀っ建て小屋が並び、ここに5000人近く住んでいるらしい。
家を建てたいがために川を勝手に埋め立てて、また下水やトイレもないので垂れ流す。今では幅2mしかないし流れもない状況だ。そんな家を200戸ほど見学した。
この調査は、不正に又貸ししている者を暴く狙いもある。職員と口論している住民も、プレマシリ氏が仲裁にはいると治まる。
その後、近くの寺兼幼稚園で、『男は組織づくりを、女も組織づくりを』で始まった婦人会・手工芸グループと会談した。
「手工芸を学び教えるうちに、これを活かせないかを考えるようになりました。頑張っているが、綺麗なお店には、自分たちみたいな身なりでは入るのも躊躇してしまい、なかなか販路を拡大できないのです」と悩みも聞いた。
【8月12日】
朝、Sunday寺集会・日曜学校に行った。朝早くから、共に白い民族服を着た親と子が連れ添い続々と大きな寺に向かう。
イスラム教であるHA一家も子供連れて仏教の寺院に集まる。スリランカでは朝6時になるとテレビ番組でのお経を最大音量で流す。遠くで聞こえるお経とリスの鳴き声で目が覚める。
(ちなみに仏教70%、ヒンドゥー教15%、キリスト教8%、イスラム教7%)
生活のど真ん中にそれぞれの宗教がある。日曜学校は日曜日に寺院で歴史や国語を教えている。
ちなみに、子供たちの識字率は9割を越す。親は家事の手伝いで午前中の学校を休ませても、塾にはほとんどの家庭が休まず通わせているらしい。お母さんたちは教育には熱心だ。
キリラポネ(78年にプレマダーサ首相時、初めて行われた住宅計画建設地域、SAVE THE CHILDRENが融資)地域を見学。
初期成功したモデル地域で、街づくり委員会の方と会談した。当事の苦労と失敗談を聞く。
「当時、村づくりは自前で、手さぐりから始まった。トイレや公園も自分たちで作ったし、ゴミも一箇所に集めるようにした。道路は真っすぐにすれば良かった」と、設計ミスが心残りのようだ。
リーダーの一人の女性が当時を振り返り……
「学生時代は、恥ずかしくて友達に自分の家を見せられなかった。だから15の時からこのグループで活動している。住民組織のモデル地域であるが、街中にあるため土地が高く、未だ土地所有権はないのです。土地所有権で子供の入学の合否も決まるので早く獲得を目指してます」と言う。
その後、ステイ先に帰り、ナンダラ主演の映画を観賞した。映画の中での彼の熱演を観て、本当に俳優だったとわかりびっくりした。近所の公民館で、ナンダラとメンバーによるゲリラストリート演劇を観た。内容はこんな感じだった。
子どもが現れてゴミをポイポイ捨てる。
注意すると、母さんがお使いの途中で川にゴミを捨ててくるんだよ、と言ったから……と言い訳する子ども。
そこへ、マラリアで子どもを亡くして自暴自棄に酔っ払う男が泣きわめきながら現れる。
さらに男の前に、蚊とカラスに扮したメンバーが現れる。
蚊とカラス
「マラリアは俺たちがばら撒いた」
子どもを亡くした男:
「なんで悪いことをするんだ!」
蚊とカラス
「悪いのはゴミを捨てる人間の方じゃないか!」
子どもを亡くした男
「好きでばら撒いてるんじゃない!じゃあゴミは捨てない事を約束するよ!」
蚊とカラス
「僕らもマラリアをばら撒かない事を約束するよ!」
太鼓を打ちながらの迫力ある熱演に観客の子どももお母さんたちも次第に引き込まれていた。
各地で月3回ほど演じるらしい。その後、スラムの成功者の4階建ての家宅を見学。このスラム地区でのモデルになっている。日本で何年も出稼ぎしたとのことだった。今夜の屋上歓迎会には、川向こうの自治会長とステイ先の主人が加わった。 |