その後、バドウィタ地区の住民たちに自慢の住居を隅々まで案内される。次から次へと住民たちの手招きを受け、30件ほど見学した。「見てくれ、見てくれ」と自分の家の前で立って待ってる。なかなか解放してくれない。住民たちはとても狭い家に6〜8名で住んでいた。勝手に電線を引っ張ってきている家はあったが、大半は電気もなく暗い。
その後、大便がたれ流されゴミの浮く汚い川や、集合洗濯場兼体洗う場所、ドアのない集合トイレを見学する。こんな場所でも、カメラを向ければ、子供たちはみんな笑顔だった。
その後、川隣の合法スラム地区※1へ移動し、トイレを見学する。
合法スラムでは、『子供会』で歓迎を受けた後、ゴミの分別の現状を見学。その後でトイレだけは豪華な家を10件ほど見学した。国が10万ほど負担し、20万ほど自分たちで出して自分たちで造る。トイレがホテル並になると、はじめて自分の家を汚く感じ、家を綺麗に造り直そうという気づきにつながる。なるほどなぁ…と感じた。
また後日、演劇を通して、子どもや親にゴミ問題に気づかせようとしている彼らの姿を見て、「綺麗と汚いの価値観をどのように教育をしてるのか?」と尋ねた自分を恥ずかしく思った。本やチラシではなかなか住民に浸透しないことを体感してきている彼らは、自分たちで工夫し、親や子供たちにリアルな演劇で懸命に伝えている。
民館では、下水やゴミ処理の工夫と今後の課題を聞く。汚い川は、住民たちの健康や生活の質の向上も奪い、子供たちにはマラリアによる死をもたらす。まずは、ゴミ処理と分別が重要なテーマとなる。
ゴミの回収は現行、3週間に一度しかない。しかし、住民の狭すぎる住居には、三週間もの長い間、臭う生ゴミを保管するスペースはない。だから、川にも捨ててしまう。トイレや下水の普及・改善もないため、みんな垂れ流してしまう。だからまず、住居問題を改善しなくてはすべてがうまくいかない。家ありき、同時にトイレや下水の問題、そして教育のための『子供会』『婦人会』…すべてが点ではなく、線でつながっているのだ。
『子供会』に参加し、子供たちに歓迎を受けた。この日のために、思いおもいの衣装を用意して踊りを披露してくれた。年長のリーダーは16才。下は5才ぐらいからの『子供会』であろうか。今の日本の子供社会にはない『子供会』ならではの、先輩が兄貴代わりに教育する素晴らしさに触れる。みんな後輩を可愛がりながら導く普段からの姿を感じた。みんな親切で可愛く見える。立派なリーダーに導かれ、後輩も良いリーダーを目指し受け継がれていくという。プレマシリ氏も、先生のビヤーンもそうだったという話を聞いた。
ホームステイ初日、近所の男性たちとステイ宅の屋上で夜遅くまで歓談した。ステイ先はスラムといっても所有権もあり、3部屋ある綺麗なお宅だった。部屋は2階の小さめの部屋だが、日本の洋式と変わらない。ステイ先の主人はスリッパの製造所に勤めて見える方で、老夫婦は寝室を僕らにあてがい、自分たちは1Fの居間のタイルの上に直に寝てみえた。水洗トイレで、部屋の天井にはどの部屋にも扇風機が回っており、意外と涼しく蚊もいない。心地よく熟睡できた。ステイ先のご夫婦、近所の人の温かいもてなしと気づかいに、心から感謝した。
※1 合法スラムとは土地の使用権の公的承認を勝ち得た居住区。使用権があっても所有権がないため、強制立ち退きにあうとまた非合法スラムへ住まざる得ない可能性がある。だから所有権を得るまでは頑張らないといけない。 |